第15話 怒りと怒りと怒り

無人駅。そもそもが都会の方のバスに乗るゆえに、こっちのバスを降りたのは五、六人だった。そこから車だったり、電車だったりで帰る海斗も沙耶もその一人だった。沙耶の車もまだ来てない様子で少し安堵し沙耶は無言でこちらについて来いと言うように歩いていった。沙耶の後ろを歩く形で海斗も着いて行った。


「……今日は楽しかったか?…お前メインの会だからな楽しめたんならアイツらだって喜んでるだろ…俺は興味無いが」


無言を突き通し沙耶は足早に誰もいない駐車場へと歩いていった。


「……さっきあなたは言いましたね、自分は興味が無いと」


それがどうしたと言うよりも先に沙耶の言葉が海斗の疑問をかき消した。


「なぜですか?私といえ、皆さんと一緒にいた時間に価値はなかったのですか?そんなにも勉強の方が大事なのですか?」


その言葉は何か覚悟が決まっているように見え、声のトーンはあくまで普段通りなのにも関わらず、何故かそこからは怒気のような悲しさのようなものが感じられた。


「べ、勉強は大事だと思っている、だが、今日は集中出来なかったな」


自分の思った感想。司が入れば違うと呆れ返る所だろう沙耶も少し声のトーンがお気持ち低くなった


「……はぁ、そうですか」


意味のわからない質問だとクエスチョンマークが脳内を踊り散らかす。


「ん?何が言いたいんだ?」


「いえ、今日はもういいです、か・し・こ・い・!んです、自分で考えてください」


「え、あ、おい」


「失礼します」


沙耶が見せた笑顔は今までで一番怒気を孕み、一番大きな声だった。ちょうど来た車に乗り込み思いっきりドアを閉め、怒っていると誰もが分かる程だった。



「なんだったんだ?七海に太る弄りした時みたいな笑顔だったが。喜んでる?いや、そんなわけ……あ!写真撮れてない!」


ダブルで落ち込むような最後で。今日は終わった。海斗は電車では目立つレベルで落ち込んでいた。家に着いたのは21時を超えていた。

そして何も考えず風呂に入り何も考えられらず寝に入った。ちなみに何度も話しかけてたが、完全無視され七海はキレて次の日の朝の起こし方は酷かった。


日曜日だというのに、目が覚めたのは昼だった。というより、目を覚ましたくなかったというのが実情だ。祈織の告白。沙耶の怒り?

思い出の写真忘れ。全ての事柄から目を逸らしたくて勉強をするのも忘れ眠っていたかったがそれも無理だった。理由は縛り上げられている自分の体と不敵な笑みを纏う、七海だった。

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