第14話 彼女の青春の始まりは大きな音とともに
打ち上げ花火ここ最近は見ることが少なかったと思う。そもそも家を出ないから音でしか聞かなかったけど。昔はよく見てた気がする友達だった者とも、家族とも。七海が好きだったから
けど。外に出なくなって、そこから見なくなった。
「花火って夏だろ」
「試しに打つヤツを見せてくれるっていう少し小規模のやつだけどな」
クラスの連中に説明した司は見やすい場所を探しLINEで連絡を取り合いそこに集合しようと各自がバラけて行った。
が。なぜ、こうなった……
海斗は混乱していた。一人で場所を見に行こうとしたが服を引っ張られ、祈織と一緒に行動を共にする羽目になった。そして目は合わず合ってもものすごい速度でそらされる。
「おい、どうした?」
「へ?何が」
「何って、お前変だしさっきまでアイツらと一緒に行く流れだったろ」
海斗の言うアイツらの意味を理解し少し怖くなった。海斗の中には友達とか関係なしに沙耶がいるまだ数日会っただけなのにそんな関係値を築いている。そんな事に今更怖いと。
「まぁ、お前もあんまり人と一緒にってタイプじゃないしな。だが、今のお前と前のお前。俺は断然今のがいいと思うぞ」
恥ずかしさなんて感じてないかのように海斗は破顔し、その顔が祈織の表情から緊張を消し、今から言う言葉を言いやすくなった気がした。
LINEの音がする。周囲に少し人の数も増えてきていた。もうすぐ始まるのだと周りの目線とワクワク感が目に見える様だった。
ピューと花火が打ち上げられるそんな周囲が空を向いていて誰もその言葉の邪魔をしない。
「ねぇ、海斗……」
花火が咲く。その言葉を遮らないように少し早めに音が鳴る。
「好きだよ」
「は?」
そこから海斗は気づけばもう花火は終わり皆と集まっていた。
客が帰路に着こうと出口に向かい初め、自分達も帰ろうとクラスメイト全員で出口に向かいだしたバスが出ていてそこから都会の駅の方まで行くそうだ。皆んながバスに乗り込む中海斗は
近くの駅の方が家に近いと他のバスに乗った。
(告白?なぜ?)
祈織から告げられた好きと言う言葉が自分の心と脳をぐちゃぐちゃにした。単語帳を見ていても全く身になってない。集中して勉強しないとか笑いもんだと自分を戒めても全く集中出来なかった。
「あの、藤浪くん?」
「ん?って、なぜお前がここにいるんだ」
そこには少し日焼けして顔が赤くなっている沙耶がいた。隣の席でなぜ気づかなかったのだと、呆れてため息を吐く。沙耶は少し何か聞こうとしたのか少し暗い表情を孕んでいた。
「少し聞きたいことがあったのと、私もこっちに帰りの車が来てくれているらしいので」
「ほーん、で?聞きたいことって?」
「直球ですね、ですが、あまり大勢の人に聞かれたくないのでバスが着いたらでよろしいですか?」
「ん、あぁ別にいいが」
周りが遊園地帰りでテンションが上がってバスの中とは思えない騒がしさの中、沙耶と海斗は沈黙のまま時間は進んで行った。
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