第9話 朝なんて来なければいいのに

最悪の目覚め。

電話で休日に起こされるなんてブラックなんだ!

「あ?」

海斗は朝起こされた元凶に、怒りを露わにして電話に出た。

「お前もう少し愛想良くしろよ」


「朝っぱらから起こされたんだ不機嫌になるに決まってるだろ、朝弱いし」


「えー、まあいいや今日来いよ、絶対」


「現地集合だろ俺は家から行く」


「みんなで行こうぜ〜」


「じゃあな」


「無視……じゃあこいよ」


海斗は電話を切ると朝のベッドの魔力に抗い、何とか起きることに成功し、そのまま眠気と戦いながら洗面所に顔を洗いに行った。


「はぁ、ダル」


「あれ?お兄?そうだ、タオルとって」


リアルの兄妹なんてこんなもんだむしろ海斗と七海の関係はおかしい。思春期の妹が兄にタオルを要求する、全裸で。だが、不思議な事に妹の身体では発情しない。どれほど可愛かろうが。


「あ?お前朝風呂かよ、ほれ」


「ありがと、あれ?お兄ちゃん珍しいねこんな時間に髭もそって、服もマシなの着て」


朝風呂上がりの七海がいつもと違う兄の行動に疑問を浮かべ即聞き始めた。海斗は普段、髭なんて生理現象三日は放置でいいんだよ。という男の怠惰を具現化したような言葉をいい、七海から嘲笑を買った。


「今から、転校生のお祝い会だってよくだらねぇ、遊園地とか何年前だよ」


「お兄ちゃんが、クラスメイトと仲良く!!ちゃんと思い出作ってきなよ!お母さんと行ったのが最後なんだから」


そうか。家族で行った以来か……俺とこいつが迷子になってギャンギャン泣いて、冷静をきどって七海を心配させないように取り繕っていたのに俺まで泣きそうになって……


そんな事を考えていたのが表情に出ていたのか、七海も少し悲しそうな表情をしたが、直ぐに海斗の背中をぶっ叩いて笑顔を見せた。


「ほれほれ、そんなくらい顔しとらんと行ってこい!お兄、お土産は今日の思い出だけでいいからね」


「気乗りしないが行くよじゃあ昼飯だけ自分で用意しとけよ」


「ほーい」


「行ってくる」


兄想いの妹だと海斗は家から出るのとともに思った。最寄り駅に向かった。








夢を見た。昔の夢。

小さな私が一人泣いてる夢。母が病気でいなくなってからこの家はこの家族は常に静寂に包まれていた。父は私と話をしようとしなかった。仕事が忙しい。そんな父の姿を見て私も段々と話そうとしなくなっていったのである。

きっとこの関係がいつまでも続くのだろうか。

あの時の家族団欒の笑顔はもう二度と見れないのかもしれない。そして父が女の人を連れてきた。そのことに私は絶句した。そして、父の連れてきた、女の人とその子供その子は同じ歳だった。でも私の求めているものはもう戻ってこない。私の家族は穢された。父はもう……


アラームがなる。目を覚ますと自分の寝汗と絶望感。悪夢を見たのだと体が言っている。そして自分の記憶がそれは正解だと言っている。

「はぁ、嫌な夢」

遠川沙耶は孤独である。

「行ってきます。」

その返事は返ってくることは無かった

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