第6話 知り合いデートホームルーム

授業に全然集中できず、今日という日は過ぎていった。沙耶と海斗はしゃべれる時間がある訳でもなく、転校生、見た目良い、打算なく、真面目。話かけてくる生徒が次から次へと来るわ来るわ。海斗からしてみれば鬱陶しくてなかった。隣の席の周りに来るので海斗の机にあたり机が揺れ勉強のしようがなかった。それは放課後になっても変わらず…


「さて、帰るか」


「お?意外だな、放課後残って勉強!じゃないのか?俺と一緒に帰るか?おまけで祈織が着いてくるぞ?」


「ふざけんな一人でいい、それに勉強なんてこんな状況で出来ねぇよ」


「そうか?そうね。お前静かな所じゃないと完全に集中できんもんな」


周りの様子を見て司も疲弊しているのか、苦笑い、海斗に目線を戻した。


「私も一緒に帰る!」


「分かってるって祈織」


「だから勝手に二人で帰ってろ俺は一人でいい」



そんな声が聞こえたのか、隣で今日一番疲弊したであろう、沙耶がこちらの様子を人の山から覗き見ていた。そんな様子に周囲も気になったのか沙耶の見ている方向をみんなしてみた、海斗への一直線の道ができていた。


「あ、あの!藤浪くん。今日も勉強見てください」


『!!!!』


「あぁ、図書室でいいならいいぞ」


『!!!!』


クラスにいる海斗、沙耶以外の全ての生徒が驚いた。二重の意味で驚いた。

まず、今日男子の全ての誘いを断っている沙耶が自ら海斗に話しかけたこと。そしてもう一つは、海斗がそれに応じたこと。そもそも人とのコミニケーション能力が絶望的に終わっている海斗が朝、沙耶の手を引っ張り教室から出ていく、その時点で意味不明の混乱状態だった。プラスで今の、二人で勉強するということがクラス全体を驚きに包んだ。


「はい、ありがとう!藤浪くん」


「そんなのいいから勉強行くぞ」


クラスから出ていく二人を口をぽかんと開けて、クラスメイト全員があほ面を晒していた。



「なんか目立ってね?」


「そ、そうですね」


図書館で勉強していた時よりも、さらに人混みというより、皆がこちらを伺っているように思えた。



「まぁ、それはいい、それでなんでお前がここにいるんだよ!」


そこには勉強関係なしに、スマホをいじる、司の姿があり、そのツッコミを待っていたと言わんばかりに口角を釣り上げ、不敵な笑みを見せ、海斗にダル絡みを始めた。


「いいじゃんよー!俺とお前の仲だろ〜〜」


「誰がだ!くっつくな」


「つれないなぁ、まぁ、別に俺にとっては面白ければなんでもいいし、単刀直入に聞くわ。お前と転校生ちゃん…つまり遠川さん、君たちってズバリどういう関係!!!」


『は?』


その問いは全クラス全員が聞きたかったものだった。少し間を空け、二人して口を開いた


「ただの教師と生徒だ。」


先に言葉を伝えるなは海斗。その一言で、沙耶は少々間が開き、「うん」とぎこちない笑顔で相槌を打った。そんな表情の有無が分かるほど海斗は敏感ではなかった。そう鈍感、ニブチン。


「はぁ、そうだ!今週末どっか行こうぜ!遠川さんのお祝いを兼ねて」


「悪いが俺には大事な用が」


「ちなみにお前に拒否権は無い、お前の妹ちゃんに今日朝聞いて即おけをもらっておいた」


「んな、あの引きこもり中学生!サボりやがったのか!」


司が海斗に証拠として見せたスマホのLINE履歴を見て、今日晩飯抜きと判断された七海が泣きを見るのはまた別の話。そんな二人を見て少しオドオドしながら二人の顔を見やる


「い、いいの?」


「もちろん!」


な?と全ての判断を海斗に託す形で聞く司につられ、沙耶は目線を海斗に移した。

まるで小動物のような目線を向けられ、海斗の中での天使と悪魔が争っていた。

(勉強を教えてあげないと、この子の為にも)

(遊びに行く必要?そんなのねぇ勉強!勉強!)


「…………その日だけだぞ」


ダメだった。いくら天使と悪魔が勉強させたがっても理性がダメだと言っても感情が許してしまい、そこからはやっぱなしという間もなく。


「お!一年の一回以来懐かしいよっしゃー」

ふんすふんすと首を縦に振る沙耶のそんな表情を見て、海斗も少し笑った。

そこからはあれよあれよという間に、俺も私もと図書室とは思えんほどの大声量で周りのクラスメイト全員が着いてくると言い出した。結局、今日も勉強する時間は得られなかった。

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