第4話始まりの始まり

「あー、起きたの?それにしても寝すぎじゃない?」


「しかも客人に向かって帰れだってよ!酷いよなぁ」


「ひっどーい」


人の家のソファーでくつろぐ少女は海斗、司と同じ高二で、容姿はカワイイ系だ。髪はお団子身長も140代と小さめ、これでも自分は150いっていると何度も豪語するが4月の身体測定は149.2とみごとにいっていなかった。身体測定が朝だったのも加味すると、148cmが妥当だろう。一年間もダル絡みをしてきた。二人を流石に海斗も忘れない。


「えっと、おい、邪魔だソファーが汚れる」


「おい、こら!名前忘れてやがるなてめぇ」


ダメでした。

そんな素で忘れている、海斗に流石の可愛いもキレる。一年話しかけ続けた奴が学年が変わり休暇も挟み完全になかったものにされたら誰だってキレる。 そんな反応に司は腹を抱えて大爆笑。


「はぁ、はぁ笑った笑い死ぬところだった」


「笑い死んでくれればこれから学校でも勉強捗るのにな」


「ひっど友達だろー」


「誰がだ!お前は知り合いだ」


「そんな拗らせてると友達できないぜ」


「いらん、学業の邪魔だ」


「ごらー!!!無視すんな!ボケ!!片桐祈織を」


フルネーム自己紹介と司に笑われながらブチ切れた。彼女は片桐祈織と言うらしい。大事な公式でもあるまいし彼女の事を完全に覚えることは恐らくないだろう


「ねぇ、今失礼なこと考えたよね?これ以上火に油注ぐ?あんたころ…ぶっころよ!」


可愛いとは真逆の言動に自分でも気づいた祈織は殺すとは言わず最後思い出したかのように可愛くぶっころと言っていた。そのあまりにも無理な切り替えに司は笑い死んだ。さらば


「ひーぃひーぃ死ぬ死ぬ‪w‪w‪w‪今更フルネームで本名w」


こいつホントに笑いの沸点低いなと海斗はボソッと呟いた。


「で?何しに来たんだよお前らマジで用もなくそのままだべりに来てるんだったら今すぐ帰れ」


「お前ホント俺らのこと嫌いよな」


「別に嫌ってなんて居ない。たんに興味が無いだけだ。」


「それってきらいよりひどくない!」


そんな祈織のツッコミも自分の履いていたスリッパを七海が海斗に思いっきり投げつけ、海斗をものすごく睨みひるませた。これ以上失望させるなとでも言うような目だった。


「んで?何しに来た」


「飯行こうぜ」

断ろうとした海斗にもう一方のスリッパが投げられ、行ってこいと言われているような気がした。怖い目だった


「分かった、だが、飯終えたら帰れよ」


「分かってるって!」


3人は面倒くさがる海斗のために近場で食えるところということで回転寿司らくずしに来ていた。



「ゴールデンウィークも最終日かー。」


「短いまるで儚い雪のよう」


司、祈織、はゴールデンウィークの思い出がたりをしに海斗を巻き込んだのだと海斗は気づいたが今更無駄だとあきらめ食べることに専念した。それがおもしろくないのか、二人は海斗に話を振った。


「お前はなんかしたのか?」


「どうせ勉強でしょ勉強。」


それしかやってないんでしょと祈織は挑発したが完スルー。その態度にムッとしたのか頬をふくらませて睨んだ。


(この一週間をあんまり思い出したくないんだが)

海斗が思い出すのはやはり、沙耶の事だった、

図書館で勉強を教え、口喧嘩ばかりをしていたアイツのことを。あの最後の笑みが毒のように侵食してくる。


「……まぁな」


『なんかあった?』


「なんもねぇよ」


そのまま寿司を食い続ける海斗に二人は顔を見合せクエスチョンマークを浮かべた。思い出話を続ける司、祈織の二人を見ながら海斗は飯を食べ終えた。ちなみに海斗が一番多く食べていた。3000円だった。



学校が始まった。周囲は世界の終わりのような顔ばかりゴールデンウィークの一週間ちょっとの休日この休日をもっと噛み締めていたいと願ってだが現実は非常で絶望の朝を迎える。ある

一人を除いて。


教室の端の席で異質を孕む、少年はノートに鉛筆を走らせ、自習に励む。海斗その人だった。

えぇっといった周囲の目をきにもとめず海斗はノートに書いていった。


「また勉強かよ、あいつ」


「あそこまでいくとすげぇよなと言うか怖ぇ」


「友達も恋人も勉強なんでしょ」


(ひどい言われよう)


教室に来てそうそう、祈織は海斗への誹謗中傷が聞こえた。気に入らない。そんなことを考えている自分に多少驚いた。あそこまで興味無いと拒絶されている。海斗が文句を言われていることが酷く祈織の気分を害した。これはただ面白いやつという理由で付きまとっている奴に対する思いなのか?そんな思考は一緒にいたいその一言で片付けられると祈織は切り捨てた。


「おは!海斗!」


「あ?今忙しいから」


「いやいや、あんたの前の席私だから挨拶くらいするでしょ」


「へぇへぇ」


「ほんとに興味なしか!」


話していても海斗の鉛筆の進みは止まらない。

そんないつもの事に少し笑みがこぼれたこんな歪な関係が続けばいいと……


「よっす!あ!俺だけはぶいて仲良くしてんなよー!」


「……」


「おは!つかさん」


「おい、シカトかよ!」


司と祈織の登場で周りの声も消え失せ、ギャーギャー言う、司は朝のホームルームの開始まで話していた。


「なぁ、今日。転校生来るんだってよ」


「変な時期ね?四月に来れなかったのかね?」


「色々あんだろ」


「ちなみにな海斗!転校生女子らしいぞ!!」


「お前の頭はそんなのしかないのかよ、それに邪魔さえしなければ誰でもいい」


「いや、誰が邪魔者よ、司あんたもどうやってそんなに情報仕入れてきたのよ」


そんな会話の中ドアの開く音がした。ガラガラとその音が聞こえ直ぐに静かになった。どうやら、皆が転校生に興味があるときた。


「お、おう。今日は珍しく静かだな……どんだけお前ら興味津々なんだよ、これじゃあ入るにも入りずらいだろ」


「いやー!そりゃ興味出るでしょ」


「そうだ!そうだ」


担任が空気を和ませた。期待感が高まる生徒のほとんどが次音の出るであろう、ドアに神経を集中させる。海斗以外。


「さて、じゃあ、入って自己紹介お願いします」


「は、はい!」


ドアが開く。そこには期待感を遥かに超える美少女がいた。出るとこ出ていて、カワイイ系で美人で。髪は編んであるのか、三つ編みカチューシャといった感じで割と彼女も本気なのが伝わる。


「はい、初めまして。私は遠川沙耶です。よ、よろしくお願いします。」


その名を聞いて勉強星人の海斗がパッと彼女の方を向いた。まるで夢でも見てるのか。すんごいデジャブ感!!!その日出会いが終わり物語が始まったそんな気がした。

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