第3話 過去と知り合い!

「でさ、お兄ちゃんは顔も普通だし、中身もクズだし、頭の良さだけしか取り柄ないんだから」


出来た飯を食卓に並べ食べ始めてもなお、七海はさっき海斗が漏らしてしまった。女の子についての話を延々と続けた。


「お前酷いな。だから、もう会えないって言ってるだろ。それに誰が勉強だけは素晴らしいだ他にもあるだろ」


「そこまで言ってないし、自意識過剰うざ。

お母さんもお父さんもいい出会いだったっておじさん言ってたし。」


「あの人何言ってるんだよ。親の惚気ほど気分を害すものないだろ」


「えぇ、でもよかったよ!少女漫画みたいにさぁ」


「ごちそうさま」


皿を片すために食器を洗い始めた。話を聞く気はないと言うように。


「え、早!二重の意味で!ぶー。いいじゃん。お兄ちゃんには幸せになって欲しいんだよ!」


水の音で聞こえなくなり、それが分かったの七海もスマホを弄りながらごはんを食べ、部屋からは団欒が消えた。


「じゃあ、部屋に戻るから、自分の食器は片せよ」


「ほーい」


部屋に戻ってそうそう、勉強に入ろうとしたがなんとも腑に落ちなかった。原因はやはりあいつなのだろうか?と思いつつもこれはダメだとシャワー浴びてそのまま寝に入った。こんなことがたまに起こってしまうそして大体こんな日は決まって昔の夢を見る。


中学3年の夏頃決まってこう言われてきた。

「お前の幼なじみ紹介してくれ頼む。」


なんど同じ事を聞かれるのだろう。それは放課後の帰る前友達と喋っている時だった。三人が幼なじみの女の子との縁が欲しいんだと何度も何度も言いよってきた。


「はぁ、断る」


「なんでだよー、いいじゃんよ紹介だけだからね、ね!」


「だからそういうのは」


「おいおい、頼むよ、な?」

「そうだぜ減るもんじゃないだろ」


中学生の癖にガラ悪く、金、茶、ピアス、と中学生とは思えない見た目、それに絡まれる海斗もピアスをつけて今の真人間とは想像がつかない姿だった。


「あいつの許可も取らずに、出来るわけないだろ」


「でもよ、許可なんて貰えるわけないだろあんな有名人との交友関係が」


今日は何故か食い下がってきた。いつもは何度も断る連呼で終わったんだが夏休み前の恋愛マジックのせい、だからかグイグイ来ていた。


「頼むって」


「だから無理なんだって」


「何でだよ!」


段々険悪な雰囲気になっていった。クラスに居た、他の生徒もざわつきだす。元々あまり触れられないクラスの癌だ。クラスからどんどんと帰って行ってクラスには四人だけになった中、友達の一人が舌打ちした。


「はぁ、うっざお前と一緒にいたのだって、そいつの知り合いだってのがわかったからだってのに、俺らと遊べたんだからその分返せよ!」


一人のその言葉に、二人が止めに入り、謝罪する。暴言を言ったあいつも、頭に血が上ったせいで冷静になり謝ってくる。


「す、すまん」

「わざとじゃないんだ」

「俺らはそんなつもりは」


あぁ、そうか、そういうことなのか。そういう事だったのか。俺はあくまで渡り橋。幼なじみのあいつとこいつらとの縁を繋げるためだけ。

とんだ笑いもんだな。友達なんて、自分との繋がりなんてただの、自己中心的な欲のため。友達なんて必要のない縁なのか。

全部、全部、全部、全部!!!!


海斗の感情は今までの何か全てが崩れていく、そんな気がした。そして笑った。今までの関係を切捨てスッキリしたように笑った。


「あぁ、別に気にしてない、大丈夫だ。」


「え?そ、そうかよかった」


「あぁ、じゃあな」


そこからの学校生活は勉強をしていた記憶しかないあいつらもなんどか話しかけてきたりしてきていたが、のらりくらりと言葉を流しながら勉強した。コイツらと一緒になんて居られない居たくない、そんな思いから、勉強を続け、気がつけば、こんな勉強星人になっていた。


電柱に泊まる鳥のさえずりが朝を教える。

目覚めてそうそう全身からの汗でベッタリしていた。朝シャン確定だ。


「はぁ、最悪の目覚め」


シャワーを浴び終え、スマホに目を通す。時間を見るに11時37分………

11時。11時。11時!?

いや待て待て待て!昨日21時に寝たよな?14時間!?ばばばばかな。朝勉の時間が!クッソ!これ以上時間を使うわけには!


急いで部屋に戻って勉強をしようと思ったが、リビングから聞こえる声が三人分聞こえた。七海以外は誰なのか不思議に思っていたが、勉強のが大事だと部屋に戻ろうとした。


「お兄ちゃん、起きた?全く熟睡しすぎだよ、心配になるからやめてよね。友達から電話来てたよ?」


「おい、ちょっと待て!何でお前、人のスマホ勝手に見てるの?電話でてるの?」


後友達じゃねぇし、と長ったらしい、海斗の説教を完全スルーして、スマホを触りながら話が終えるのを待っていた。海斗が喋り終えるとあ、終わったのといってスマホをしまった。


「お兄ちゃんとご飯行くから家で待ってろだって」


「嫌だ、帰る。今からまた図書館…カフェにでも行って勉強を」


「無理無理、もう来てるもん」


「は?」


「よ、カイちゃん、随分寝てたようだな」


チャラチャラした言葉遣いには似つかわず、見た目は普通でThe運動特化!の男子タイプだ。

坊主とまではいかずとも、運動のしやすいような髪の長さ。日比野司、イケメンであるが割とコミ障らしい。海斗に対しては全然普通に話しかけてきて海斗からは直ぐに怪訝な顔をされる

それが高一からの流れだった。


「誰がカイちゃんだ。出てけ今すぐ」


「酷くない!お前がどうせ、寂しくしてるんだろうなってあいつと一緒に遊びに来てやったんだからよ」


「?あいつって誰だよ、あと帰れ」


「お前、全てが酷いぞマジで!」


「お兄ちゃんも、司さんも廊下で話してないでリビング行ったら?」


「いや、要らん即刻帰らせる」


「そうだな、お邪魔するは」


「だから帰れって!」


ここから今日、邪魔されるせいで、勉強できることは無かった。

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