あわわあわわあわあわあ、あわ?~中編~
「あわがあわあわあわわんあわわわわ」
「あわあわにゃあわっあわわっあわっわわっ」
広場までの道のりが、それはそれはキラキラなふわふわのふっわふわだった。
地面から塀からパン屋の看板まですべて泡なのだ。風に運ばれるなんとも大きな粒の泡が越えた屋根の風見鶏の鶏冠がやっぱり大きな粒の泡でもっもっと包まれていたり、春色の自転車の籠にとっても大きな粒の泡が積まれていたり。
初めて見る幻想景色に、二人は惚れ惚れした。
「ほふぇー。みかんさん、あわで町、見えないね。あわ、大きいね。そういえばさっきの道のあわもすっごい大きかったなあ」
「そうねぇ。泡いっぱいよね。泡はねぇ、食べちゃわないように大きいのよ。そうそう、道は“泡の日交通安全隊”が守ってくれているから大丈夫よ。ほら、あちらの人。襷を掛けているでしょう?あの襷の人が道々に居るからね。泡に困ったら声を掛けてね」
「ほりょー。おっきいちぷーんもっちるぅ」
「そうよぉ。泡用のスコップなの。ほぼスプーンよね」
瞳を輝かせて広場に着くと。
そこはたくさんの人と洗い物で賑わっていて、大粒の泡が太陽の光を受け、キラキラふわふわと漂っていた。
「ほふぇー。あわ、にじいろ」
「ほにゃー。あわあわ、にぢにぢ」
山のように積まれた服をえいさほいさと洗う人たちや、机や椅子をわしゃわしゃ擦る人たち、虫取り網や布団叩きに泡を纏わせてわっさばっさ遊ぶ子どもたちに、幟や暖簾を泡と巻き巻きしたり伸ばしたりしている人たち。
みんな泡でもこもこになりながらも楽しそうだ。
泡の山に逢った時ははてなはてなで、次にちこっとあわあわしたけれど今はわっくわっくしている。
みかんさん曰く、お祭りの様なものだとか。
ふむ。はばたき、おまつりたのしむのだ。
うぬ。のびりゅ、おまちゅりたのちむみょ。
わっくわっくしているので踵がすっとんこっとんしているのびるの目に、“泡の日交通安全隊”の巨大スプーンが入った。
ちぷーん。ちぷーん。おっちなちぷーん。ちぷーん。ちぷーん。あれは、こーひーちぷーんじゃないみょ。おみらいちをたびゅるのでみょないにょ。ぱふぇでも、すーぷでもにゃい。あれは、きっとけーちのだ! でも、けーちがにゃい。なじぇ?なじぇにゃい?けーち、けーちがないちぷーんはけーちのちぷーんじゃない。なりゃなんだ?あ、あわようだったみょ。うーむ。でみょけーち、けーちがあるとあれはけーちのちぷーんになりゅ。のびりゅはけーちのちぷーんちきだみょ。なんてったってけーちのちぷーんなんだみょの。そうだ、はばたきとちくろう。けーち。はばたきもけーちちきだみょにょ。
「ねぇねぇはばたき。あわでけーちちゅくるすりゅ?」
わっくわっくで肩を揺らしていたはばたきは、すぐに頷いた。
「のびる、それすてき。理由はあのスプーン?なら、あれに合う、おっきいケーキ作るするね。みかんさん、はばたきとのびる、ケーキ作るする」
「あらぁ、いいわね。私はあの橙色のお花の前で洗い物してるわね。帰りは一声掛けてくれると嬉しいわ」
「「うん!」」
はばたきとのびるはみかんさんと別れ、何処で作ろうう?と見渡す。
「のびる、あっこは?」
「よきだにょ」
はばたきが指さした先の泡の山に近付くと、お山がブルブル震えだした。
ん?と見ているとばびょんっ、と何かが泡を弾きながら飛び出した。
「うびょお」
はばたきは口を縦長に開いた。
「う゛ひょあ」
のびるは目と口をカッと見開いた。
あれ?うびょおってなんだっけ?
のびるの腕を抱き締めながら、はばたきは自問した。
なんかそんな名前のなんかなかったっけ?なんか、なんか、ほら。あ、違うな。うびょおはうびょおだな。うん。
はばたきは自問自答が成功したので、目の前の飛び出て来た方に集中した。
“う”に、゛ついちゃ。
はばたきの髪が口に入ったのでそれを噛み締めながら、のびるは思った。
“う”に、゛ついちゃ。そう、゛は“う”にちくとヴになりゅのに、ヴじゃにゃくっちぇ、う゛だっちゃみょ。ふみゅ、おもちろち。う゛。う゛。う゛。うん、いっぴゃいいっちゃ。
のびるは、う゛を堪能したので目の前の飛び出て来たものをじっと見た。
「ぷっはー! 泡の中って泡だらけだなー」
真夏に麦茶を飲んだ時のような声をあげた飛び出て来た人は、海水浴場に居るような格好だった。
はばたきののびるを見付けると、「おーっ! 」と元気満タンに手を挙げる。
あれ?知り合い?と思いながらも「おぉ」「おぅ」と手を挙げ返す二人。
「知らん子だけどこんちはー! 楽しんでるかーい?泡の日いぃー」
うぅえええーいっっ! と叫んでなんとも楽しそうである。
はばたきとのびるはうぅえええーいっっ! までいかなかったが、うえー! くらいのテンションにはなっていたので、うえー! を驚きから掘り起こしての挨拶を試みた。
「知らない人だけどぉーこーんにちはー」
「あわにょおーひぃー、たのちぃーたのちー」
残っている驚きで棒読みになったのは、致し方なくなのだ。
うわっはっはっは! と仰け反るうぅえええーいっっ! の人。
うむうむ、元気なのだ。
げんちげんち、よきよき。
「そりゃーよかったぞー。あれ?きみ、髪食ってるぞー。あれ?きみ、髪食われてるぞー。その様子だともしかして泡の日初めてかー?そりゃーおめでとー! あー、そうだー。泡の日の洗剤は特別仕様なの知ってるかー?」
「ちょくべち?」
「そうだぞー。これ見なー」
うぅえええーいっっ! の人は、そこらでもっもっとしている泡に手をズボッ! と突っ込んだ。広げた泡だらけの手のひらに息を吹きかけると、泡はコロンこロロロコろろろロンと転がっていく。
「ほらー。泡が肌に引っ付かないだろー?」」
ニカッ! と満面の笑みのうぅえええーいっっ! の人。
「ぬぇっ! あわボールみたい」
え?なんで?なんでなんで?気付かなかった。
「ぬぼっ! あわわぽよんぽよん」
え?あわわっちぇぼーりゅだっちゃのん?
「泡って空の雲といっしょでさー、中で泳ぎたくなんだよなー。だけど泡って引っ付いてくるだろー?あれがなーーーーーんっか苦手でさー、どうにかしたかったらどうにか出来たんだー。髪の毛にもつかないだろー?ってことで泳げるんだー。ほら、服とか物にはちゃんと引っ付いて洗えるだろー?それとー、靴は脱いだらだめだぞー。泡踏んだ時に割れないからなー。はいてたらちゃんと割れるからなー。あとー、泡の粒がおれの拳より大きいのばっかだろー?目とかに入らないんだー。いーの作ったなーおれー。ってなわけで楽しんでなー」
にゃんちょあわわをちゅくっちゃひとだっちゃ。そりはてんちょんあぎゃるかみょ。
先程脱いだ長靴はみかんさんに履くよう言われたので二人の足に再装着されていた。
よし、よきなにょ。
「はいなのです。あなたも楽しんで」
「あいなにょでち。あにたも、たにょしたにょし、してんぬぇん」
「おうよー」
うぅえええーいっっ! の人は泡の中に帰って行った。手の型はバタフライだった。
「のびるも泳ぐ?」
「んにゃ」
のびるがじっと見ているので聞いてみたが、泳がないらしい。
「だよね。はばたきも」
「うんにゃ。あり?」
「のびる、どうしたの?」
「ありぇ、ふんちゅい?」
「わあ、噴水だ」
「いこいこ」
「うん。のびる、おててつなご」
「うんにゃ」
れっちらごー、と二人は噴水へと向かった。
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