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 度重なるベルベット様の鬼籍入り。そろそろ何度目か数えるのも面倒になってきた。

 そしてその原因の半分近くは、どうも本人の油断や慢心が占めている模様。


 加えて死んだところで蘇るものだから、あの人の性格上、反省にも繋がりにくい。

 だいぶ悪循環。ナントカは死んでも治らない的な。


「毎度毎度、屋敷でリスタートってのも面倒よね。かったるぅ」


 全力疾走で元の地点まで戻り、息ひとつ乱さず、かぶりを振る我が主人。

 なにゆえ復活リスポーン地点が僕の足元なのかは皆目見当もつきませんが、無駄な往来が嫌ならシンプルに死ななければ良いだけの話だと思います。


「てか小腹空いたわね。おやつにしようかしら」


 さっきの焼き回しになりそうなので、やめて下さい。

 折角、穢モノ達が蘇る前に戻って来られたのに。


「あ。水筒に新しくワイン入れるの忘れてた」


 戦地で平然と酒を呷る神経、全く理解出来ない。






「ばーんばーんばーんばーん」


 チャンバラに飽きたのか、硝子刀がらすとうを鞘に収めたまま、銃のみで応戦するベルベット様。


 しかも全弾、零距離射撃。四半秒タイミングを誤れば即御陀仏な綱渡り。

 流石に戯れが過ぎる。だから死神のナンパにホイホイ引っ掛かるんだ。


「っと、危なぁ」


 九十度近く上半身を倒してのスウェーバック。

 紙一重で胸元を抜ける、汚泥に塗れた大鉈。


「すかさず、ばーん」


 全くバランスを崩さぬまま体勢を戻し、頭部らしき箇所に発砲ファイア

 次いで、後頭部目掛け飛来する短矢を一瞥もせず掴み取り、握り潰す。

 ……こうやってちゃんと警戒してれば、そうそう飛び道具なんか食らいやしないのに。


「ずだだだだだだーん」


 しかしこの人、ホント漫画カートゥーンのポリスメンみたく撃ちまくるな。

 四、五発で眩暈を起こす僕とは大違いだ。






 数分おき戦闘手段スタイルを変えつつ、着々と前進するベルベット様に付き従うこと暫く。

 歩む都度、濃度を増す穢れが視界を塞ぎ始めた頃合、ほぼ等間隔だった靴音が止まる。


「到着っ」


 唸り声に似た音を立て、風に混じって渦巻く黒。

 ここら一帯の穢れはを中心に引き寄せられていると、本能的な部分が察する。

 

「なーんか日に日にボロくなってるわねー」


 どうにか建物としての原形を残す程度に半壊した神殿。

 まだ新しい破断面が多い。ベルベット様が繰り返し暴れたことによる爪痕だろう。


 或いは──この中に居る、何かの仕業か。


「今日こそ叩きのめす」


 静かに殺気立ちつつ、抜剣。

 併せ、スカート裾に仕込んだ軽食や医薬品を、邪魔だとばかりに振り落とす。


「喜びなさいシンカ。アタシの英姿を子々孫々まで語り継ぐ権利をあげるわ」


 別に欲しくない。てか要らない。


〔謹んで頂戴致します〕


 銃と硝子刀がらすとうを携え、軽くステップを踏む矮躯。

 そしてノックの代わりとでも言わんばかり、とうに扉など失われた正面口──の脇を蹴り砕き、拵えた大穴を潜って行く。


 …………。


〔あの、ベルベット様。何故わざわざ壁を壊したのですか?〕

「こうやって入った方がカッコいいでしょ」


 アウトロー気取りな男子中学生とかと発想が同レベル。

 言葉も出ない。











【Fragment】 銃(2)


 射程距離や出力などの上限は良くも悪くも使い手に依存するため、銃本体は携行性を高めるべくコンパクトに作られることが大半。

 光弾の生成限界は、一日で三十発から五十発が中央値。十メートル以上離れた状態から人一人確実に殺せるだけの威力を持たせられる者は、全体の二割前後。


 ベルベットの場合、一分間につき二十八発以下のペースなら消耗より回復の方が早い。

 有効射程は約一マイル。ただし当てるだけなら二マイルは届く。





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