第113話 意外な言葉
「スサイン」
「ダリオにサナザーラ、それに……」
「マナテアです」
「何があった?」
ダリオは、マナテアの異端審問を防ぐため、ショールを倒したこと、そして見たことのない襲撃者に、マナテアが攻撃されたことを告げた。
「
サナザーラが言い添えると、スサインは『そうか』とだけ答えた。
「マナテアを生き返らせたいんだ!」
ダリオは、スサインのあまりにもあっさりした返答に焦った。
「
やはり、同時行使が鍵なのだろう。スサインに言われてから訓練をしてきたとはいえ、スサインの言いように不安が募った。。
「できるようになったよ!」
実際とはほど遠い答えを返す。現在のダリオは、かろうじてできるに過ぎない。
「完全にか?」
「か、完全とは言えないけど……
「完全に使いこなせねば、
ダリオは唇を噛んだ。
「でも、マナテアを助けたい! そのためにショールを倒したし、エラだって……」
言葉が続かなかった。掲げているマナテアの
「手はあるのであろう?」
不意にサナザーラの声が響いた。
「不可能だと言わぬ以上、手はあるのであろう?」
ダリオは、顔を上げて彼女を見た。意外なことに、サナザーラがスサインを説得しようとしてくれていた。
「ない訳ではない。しかし問題もある。
スサインの問いかけは、サナザーラに向けたものだった。ダリオの後押しをする理由を尋ねていた。
「イースがいる。このような機会は、二度と訪れないかもしれぬ。今、この生が機じゃろう。アウルの転生を待つよりも
「イース? アウル?」
そうだとしたら、イースは狂戦士イーシュのことに違いない。狂戦士イーシュは、女性で魔法を使わない戦士だということだった。
『まさか、ミシュラ?』
他には思い当たらないが、ミシュラと狂戦士では違和感がありすぎた。
サナザーラの言葉に、スサインはなかなか答えない。悩んでいるのかもしれなかった。
「マナテアを
「……真にか?」
スサインの問いは静かなものだった。しかし、妥協を許さない厳しさを感じる。それでも、答えは変わらない。
「絶対にやります!」
「……良かろう。だが、そう身構えるな」
ダリオは、空いている片手を握りしめ、全身に力を入れていた。
「無茶な要求はせぬ。しかし、その方にとっては苦しいことかもしれぬ」
そう言ったスサインは、
「今後、覚醒の時を迎えるまでは自重し、教皇庁、
何度も言われてきたことだ、スサインだけでなく、ウルリスの言葉でもあった。サナザーラにも言われたような気がする。
確かに難しくはない。何もしなければいい。しかし、今までの自分の行いを省みると、この約束をしてしまえば、辛い想いをしなければならないだろう。
それでも答えは変えられなかった。
「誓います。覚醒の時を迎えるまでは自重し、教皇庁や
「良かろう。必ず自重せよ。その娘を
「どういうことですか?」
ダリオの問いに、スサインは「順を追って話そう」と言って、マナテアを
「まず、今のその方では
「保存する?」
「そうだ。その方は、この場まで自分の
「それはつまり……」
「肉体をアンデッドにするということだ。だが、その方が
確かに、理屈としては理解できた。ただ、ダリオにも抵抗はある。ゴラルは尚更だろう。それでも、やるしかない。
「問題は
そう言われて気がついた。
「もしかして、その玉に?」
「そう。この
「妾はどうすれば良い?」
問いかけたのはサナザーラだ。マナテアの
「パイマールかクルスに別の
「どこかから、ここに持ってくればいいんですね」
「やってくれるか?」
時間はかかるが、この方法なら、マナテアを生き返らせることができるという。当然、そのくらいはやらなければならないだろう。多少遠かったとしても、薬の行商をしながら旅をすればいいだけだ。今までと変わらない。
「分かりました。やります」
「その方が行くなら、パイマールよりもクルスが良かろう。場所は後でサナザーラに聞くが良い」
ダリオが肯くと、スサインから「では、始めよ」と告げられた。
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