第101話 作戦と準備①
碧く光るスカラベオを捕まえることができたので、ショール司祭と護衛の騎士をおびき出す作戦を立てる。ただ、全員で集まって相談することはできない。まず白犬亭にいるウェルタと話した。日はまだ高い。ミシュラがヌール派教会から戻ってくるには時間があった。
「これでおびき出せるはずです。ミシュラがネズミに変身して咥えて逃げれば、追いかけてくると思います」
「
ウェルタが眉を顰めている。
「いくらなんでも長すぎるだろう。追いかけたから逃げた、とは考えるかもしれないが、不審に思うはずだ」
「でも、他におびき出す方法なんてありません。それに、碧く光るスカラベオは、彼らにとっても貴重なはずだし、何より、彼らはスカラベオの秘密を守ろうとするはずです」
「確かに、スカラベオを使って生命力を集め、白死病を引き起こしているのであれば、その証拠となるスカラベオは重要か……」
ウェルタは、まだ疑問を感じている様子だったが、他に妙案も思いつかなかったようだ。マナテアとゴラルに伝えると言って
ダリオは、エイトとクラウドのところに行き、サナザーラに鳩を飛ばしてもらうように頼んだ。白犬亭と
手紙の内容は、ショール司祭をおびき出す作戦を説明に行くことと、
ミシュラには、スカラベオを咥えて
ヌール派教会から戻ったミシュラに作戦を話すと、引きつった顔で肯いた。
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夕食を食べていると、戻って来たウェルタから目配せされた。話があるようだ。軽く肯き、食べ終えて部屋で待つ。ウェルタは足音を忍ばせてやってきた。
「便利だな。才能がないことが口惜しい」
滑り込んできたウェルタが、ドアを閉めると言った。
「少ないらしいので、できないことが普通です」
お互い、なるべく不死魔法に関わる言葉は使わない。
「それで、どうでしたか?」
ウェルタに椅子を勧めて尋ねた。
「マナテア様も、途中で不審に思うだろうと言っていた」
ダリオは唇を噛んだ。
「そんな顔をするな。マナテア様は、ちゃんと代案を考えてくれたぞ。ゴラルは反対していたがな」
ゴラルが反対したということには疑問を感じながらも、その代案がどんなものだったのか尋ねる。
「途中から、マナテア様自身が囮になるそうだ」
「どういうことですか?」
「スカラベオを咥えたネズミを、マナテア様が操っているように見せるそうだ。逃げたネズミをマナテア様が確保し、スカラベオを持って逃げる。これなら、確実に追ってくるだろうと言っていた」
ダリオは息を飲んだ。確かに、これならマナテアが
「私も危険だと言った。ゴラルもだ。だが、マナテア様としては、自分が大した事ができないことも気になっているようだ。ショール司祭を倒すことは、彼女を助けるためなのに、彼女の魔法では、恐らく二人の聖騎士には効かないだろう。魔法が得意と言っても覚醒前。威力はそれほどではない。相手は近衛聖騎士だからな。だから、マナテア様としても役に立ちたいのだ。マナテア様がスカラベオを捕まえて逃げたのなら、彼らは必死に追ってくる。スカラベオを確保するため以上に、マナテア様を殺すために」
その上で、ゴラルとウェルタ、それに神聖魔法を使い彼らの治癒ができるダリオが後から地下通路に入って追えばいいという。そうすれば、例えショール達が途中で躊躇しても、挟み撃ちにできる。マナテアが追い着かれないためには、あらかじめ地下通路に障害物になりそうなものを置いておき、走り抜けながら倒せばいいとも言っていたそうだ。
確かに、この案はダリオが最初に考えた案よりも、良さそうだった。
「分かりました。ミシュラも
「やるのは、明日の夜だな?」
ウェルタの問いに肯く。
「はい。そうなると思います」
「分かった。明日は教会で邪魔になりそうなことがないか調べておこう」
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