第100話 スカラベオ捕獲
ミーナはベッドに横たわり、弱々しく呼吸していた。ありったけの魔力を使い
そのウェルタとエイトも、今はベッドを囲んでいる。ミシュラもだ。ミーナの発病から七日目、いよいよ、スカラベオが体の中から出てくるはずだったからだ。できれば、どこから出てくるのか観察したいところではあったが、今はスカラベオの捕獲が最優先だった。
「いくよ。いち、にの、さん!」
エイトがミーナの太もも、ウェルタが彼女の足先を持って足を上げさせる。ダリオと反対側にいるミシュラが袋をミーナの足先にかぶせ、たくし上げるようにして彼女の体を袋に入れて行く。足を袋に入れた後は、エイトがミーナの腰を支え、残りの三人で袋をたくし上げた。
お腹の上まで袋が来てしまえば、後は簡単だった。一旦、上体を起こして彼女の全身を袋に入れる。口に袋が当たり、呼吸が苦しくならないように顔の上には小さな踏み台を置き袋の口をまとめる。そのまとめた袋の口には、ガラス瓶をしばり付けてある。ガラス瓶にスカラベオが入れば成功だ。
ミシュラがスカラベオを追いかけた時の状況から、スカラベオが
「これでよし」
準備は整った。後は、いつになるか分からないものの、スカラベオが出てくることを待つだけだ。心配そうに見つめるエイトには外してもらった。彼も、必要以上には知らない方がいい。ダリオとミシュラ、それに「私も見たい」と行ったウェルタの三人で監視する。ヌール派の教会にも行かなければならないので、午前中はダリオが教会に行き、午後はミシュラが教会に行くことにした。
ダリオが戻って来ても、まだスカラベオは出てきていなかった。ウェルタは、椅子に腰掛け、腕を組んでガラス瓶を見つめている。
「正確に七日間だとすれば、もうすぐだと思います」
ミーナは、発病した日の昼までは元気だった。
「魔導具なら、正確だろう」
ウェルタと並んでガラス瓶を見つめていると、袋の布目から光りが漏れたような気がした。そして、瓶の中に光の粒が落ちる。
二人同時に立ち上がった。
「本当に光ってるな」
ウェルタが瓶を手に取りガラスを透かし見た。スカラベオが瓶の底でもがいている。
「僕も初めて見ます。確かに
これなら、遠目にもよく見えそうだった。ネズミに変身したミシュラが咥えて逃げれば、追ってくるだろう。
スカラベオがガラスを登れないことを確認して袋を縛り付けている紐を解いた。瓶に蓋をしてほっと息を吐く。これで、ショールをおびき出せるはずだった。
「エイトを呼んで、薬の準備をしてきます。袋を外す作業を手伝ってあげて下さい」
階下に降り、エイトに声をかける。そして、厨房を借りてトロコロを煎じた。部屋に戻ると、もうミーナは袋から出されたいた。
「薬を飲ませて体温が上がれば、もう大丈夫なはずです」
「ダリオ、本当に、本当に感謝する!」
「う、うん」
手を握ったエイトに跪いて礼を言われた。今までも、薬が効いた時に感謝されることは多かったものの、これほどの時はなかった。ただ、脳裏にエラの顔と天に昇って行った
そそくさと、煎じたトロコロを飲ませ、毛布を掛ける。
「後は、我らで面倒を見るから」
そう言って、ウェルタがエイトを追い出してくれた。
「他に何かやることはあるか?」
「魔導具なら必要ないかもしれませんが、水くらいあげた方がいいかと思います」
そう言って、厨房でしめらせて来た綿玉を見せた。ウェルタがガラス瓶を開け、その中にそっと綿玉を入れる。
スカラベオの反応は、予想外だった。綿玉を避けるようにして、ガラス瓶の中でもがいていた。
「嫌がってないか?」
ウェルタにも、そう見えたようだ。
「入れない方が良さそうですね」
綿玉を取り除くと、なおも外に出ようとしているものの、必死な感じはなくなった。これも、後でスサインに話した方が良さそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます