第98話 エラ
粗末なアンクが掲げられた祭壇の横に腰を下ろし、ダリオは何を見るでもなく、礼拝室を見渡していた。
意味を持たない視界の中で、ゆっくりと動くものがある。浮かび上がってくる
『二人目……』
ミーナの治療を行うと決め、その代償として、この礼拝室に横たえられている三人に魔法を施すことを諦めた。
今さら後戻りはできない。三人の内、二人が死に、残っているのはエラという名前の少女だけだ。彼女も既にかなり衰弱している。今日の夕まで保たないかもしれない。今から彼女を助けようとすれば、エラにも多くの魔力を使わざるを得ない。ミーナは確実に助からない。ミーナは、ダリオが全力で治療しても苦労する程に
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ミーナの治療をすると告げた時、エイトは涙を流して感謝してくれた。しかし、それは大変なことだった。
彼女の治療は、エイトの頼みを聞いたからではあったが、それ以上に体の中に入っているスカラベオを捕まえるためだ。出てくるスカラベオは、恐らく碧く光っているはず。
そのために、エイトに彼女の両親を説得してもらい、横たわったままの彼女を、こっそりと白犬亭に運び込んだ。ダリオとミシュラが泊まっている部屋だ。もちろん、クラウドにも事情を話してもらった。彼は、ミーナが
毎日、長い時間ミーナの家に籠もった上で
大きな袋もエイトに準備してもらった。コール芋を保管するために使っていたずた袋を繋げたものだ。七日目には、彼女の体を袋に入れ、出てくるスカラベオを絶対に捕まえる。
準備以上に大変だったのは、魔法での治療そのものだった。
それでも昨夜は危なかった。ダリオが教会から戻ってくると、もう
スサインに言われてから、
神聖魔法で生命力を回復させようとすれば
ダリオは、スサインに言われ
だが、難しいだけで、できないことではなかった。スサインも訓練するように言っていたし、ダリオもおぼつかないながらミーナの
もしかしたら、体が致命傷を負い、完全に
スサインは、偽りの
もしかしたら、偽りの
ダリオは、そこまで考えて思い出した。初めてマナテアと会った日の野営で彼女から聞かされた言葉だ。
『合成できないだけで、火の魔法と水の魔法、両方を行使することはできます。もしこれと同じなら、神聖魔法と不死魔法も、合成できないだけで両方を行使できるはず、ということになります』
合成ではないのかもしれない。不死魔法と神聖魔法の同時行使をすることができれば、完全に離れてしまった
同時行使である
ダリオは、ミーナの治療をしながらそんなことを考えていた。
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記憶をたどっていたダリオの視界の中で、また一つ、浮かび上がる
エラの
だが、息絶える程まで衰弱した彼女を救えば、ミーナを助けることはできなくなる。ダリオの魔力では足りなかった。先に亡くなった二人は、ただ無駄な犠牲になってしまう。
「ごめん」
いつの間にか、頬を涙が流れていた。
「ごめん……」
ゆっくりと、エラの
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