お返事くださいな
ことり
「実は」なんてありきたりすぎ?
どうでもいいくせに忘れられないことって
人生であと何個ぐらいあるんだろうね。
ほら、例えばあいつの赤と青のボールペンを一気に2個持って書く癖とかさ。中学の先生が使ってた文字のフォントとか今でも覚えてたりするじゃん。
いや別にそんな大した話じゃなくって。ただどうしようもないのになんでか覚えてることって割とあるなぁって思っただけ。
なに?さっきから。こっちは真剣なんだから冷やかさないでよね。……いや、別に真顔で聞かれた方が怖いからいいけどさ。
まぁ、このまま勢いで話しちゃうから
よく聞いて明日には忘れといてね。ふふっ。
私1個忘れられないのがさ、塾で隣だった子の話なんだけど。受験直前だったからまぁ模試があって。
いや今考えたらよくあんなに頑張ったよね。
って言ってもやっぱりその時も普通にお喋りして
結構周りの邪魔してたんだけどね。 えへっ。
えーと、それで。おしゃべりもひと段落ついてチャイムなりそうだなと思ってだらけきった体勢を整えてたらちょっと隣の席の机見えちゃって。そしたらその子何してたと思う?
勉強だよ?勉強。いやぁ、びっくりしたよね。この世に5分休みで前の科目の答え合わせも次の科目のヤマあてもしない人がいるんだって。
ちょっと、何その目。まるで私が不真面目でそっちが正しいみたいじゃん。
こいつ……うーん、少年Aでいいか。少年Aが勉強してるの見てなんか目が覚めたっていうか。腑に落ちたっていうか。んー、ちゃんと負けられた気がしたんだよね。
少年Aがひとりで姿勢よく椅子に座ってる間私なんて椅子ブランコしながらやばいしか言ってないなって気づいて。なんていうかさあぁ、なるほどな。って思ったわけよ。私がAに勝てない理由が才能じゃないんだって安心したんだ。
で、不思議と頑張ろうって気になって。いやぁ、不思議だよねオープンスクールより先生の説教より何より少年Aの一瞬の姿勢が私を改心させたんだから。いやまじだって。テスト期間中スマホ触ろうとする時とかも思い出してたんだから。もはやトラウマって言った方がいいかも。ははっ。
あ、ついでにもう1個くだらない話していい?
ね、お願い。今度アイスでもおごるからさ。
私実は少年Aのこと好きなんだぁ。
……ほんとに、冗談に見えた?
ふふっ。予想通りのリアクションだね。いい気味!
で、どうですか?少年Aくん。
2文字以内でお返事どうぞ?
お返事くださいな ことり @kotori-minato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます