書籍は博打。その博打を出版社にさせる気にする為には?

 先日の「企画と予算、稟議通過と計画頓挫のアレやコレ」のエピソードで書いたけれど、これがデビューとなる作家の書籍販売って、出版社にとってはかなりの博打だと思われます。

 おそらく重版がかからないと赤字。

 なので、「赤字にならないかも!? 重版かかるかも!?」と企画段階で、出版社に希望を持たせないといけません。


 勿論、そもそも買ってくれる方向けに、その人たちを楽しませる事も必要なのだけれど、その人たちを楽しませる為には、その前段階の「予算取りの為の稟議を通す」をどうしても意識せざるを得ない。

 そうじゃないと、まず、販売できないからね。販売しないと、買ってくれる人も楽しませられないワケよ。

 これは優先度の問題であり、どっちかだけを重視すればいいって話じゃないよ。


 どっちも勿論大事って事。


 んで。

「博打」って言葉を使ったらば。

 私の脳裏には「パチンコ」が思いつきました。

 アレが人を惹きつけるのは、「もうすぐ大当たりするかも!?」と派手にあおる所だと思っています。


 そう、ここ、ポイントっす。

「もうすぐ大当たりするかも!?」

 と、あおられる事によって、追加投資させるんですね。

 実際の仕組みはどうか知らんが、単純な仕組みを考えると、パチンコって絶対確率なので「もうすぐ当たるかも」なんて感覚は幻想なんです。

 1/100の確率だとして、絶対確率なので、都度都度1/100で抽選しています。

 つまり、いつ、何度やっても、1/100 は変わらない。

 次の抽選でくるかもしれないし、一億回抽選したって当たらないかもしれない。


 でも。


 理屈ではそうでも、人間は「期待」を持つ生き物です。

 実際にやってみないと分からない事なのに、気持ちが入るとどうしてもそこに「期待」を抱かずにはいられない。


 って事で、今回は、その「期待」をどうやったら出版社が持ってくれるのだろうか? って所を考えます。


 本文をブラッシュアップするって事は大切です。

 が。

 本文は、「購買」という意味では、買ってもらった後の購買層の口コミや、続刊購入への期待値にしかならない。


 問題は、そもそもまず「買ってもらうには」を考えないといけない。


 買ってもらうにはどうしたらいいか?

 そう。

 まずは、購買層に存在を認識してもらわないといけない。

 その存在を認知してもらうためには?


 そう。広告だね(微笑み


「広告」って言うと、ちょっとなんか、「拝金主義」な匂いがしそうだけれど……広告はお金の為、売り上げの為ではなく、そもそもその前段階の「存在を知ってもらう」という為には、物凄く必要なものなんです。


 どんな物も「物が良ければ売れる」という事はありません。

 ゼロだとは言いませんが、物凄ーーーーーーーーーーくレアです。

 まずはその存在を知ってもらわないと、そもそも「買う買わない」の判断まで辿り着けません。

 コレ、製造者──ソレを作った側がよくおちいる心理なんだけれど、

「これだけ良い物なんだから、使われない訳ない」

 って思ってしまうんですよ。

 私もそう思っています。小説もそうだし、仕事で作ってるプログラムもそうだよ。

 大概作り手っていうのは、自分の作ったものにプライドを持ちますよ。

「ゴミを作った」とか思わないよ。そう思いながら作ってるとしたら、製造系の仕事に向いてないから、精神衛生上ヤメたほうが良い。もっと向いてるものを探そう。


 ──まぁ、時々例外として、「ただ面白いだけで、殆ど何の役にも立たないもの」を作ることもありますが、それって趣味でしょう? 売る気ないよね。

 それを作ることは否定しないし、むしろそういうのを作ったり、作られたりするのを見るのは大好きです!

 みんな、有り余る才能の無駄遣いとかさ! 最高だと思うよ!!! 真面目にフザケるとか、人生のうるおいじゃん!!


 話が逸れた……


 その存在を周知させる事自体が重要です。

 人の目に触れて存在が知られた後、良い物であれば、まぁ売れるでしょう。


 って事で。

 広告を打って、人の目に触れさせる事が大切になります。


 じゃあ、どんな広告を打てばいいのか?

 ここで素敵な広告の企画が立てられれば、出版社の期待をあおれるかもしれない。


 ここで気になる人がいるかもしれないっすが。


「え? 広告って、出版社がやる事じゃないの?」

 と。


 勿論勿論、出版社も、自社の売上に関わる事ですからね。広告は打つでしょう。

 でも。

 売れた前例がある有名作家さんの作品なら、そりゃあ力を入れて広告するでしょうが、私はこれがデビュー作となる、駆け出し未満のITエンジニア底辺物書きよ?

 売れるかどうかも未知数の作品の広告に、どんだけ力を入れてくれるかって話よ。


 全力出せよ!

 差別するな!

 私の作品も他の作家さんと同じだけ力を入れろよ!


 と、思うかもしれないけれど。

 よくよく考えてみて欲しい。


 例えば、ワンピースの尾田栄一郎さんの作品と自分の作品、同じ広告を打ったとして、どっちがより売れると思う?

 同じだけ売れると思う?

 尾田栄一郎さんの方が売れるでしょ?


 そこで「いや! 同じ広告を打ってもらえれば、あの人よりも売れる自信がある!」と思ってる人。

 その自信は素敵。そのポジティブ思考、いいよ。その気持ちって物凄く大事。

 でも、現実も見ような。

 自信を持つ事ってとっても大事だけれど、身の程を知ることも、生きやすくなる為には必要だからね。じゃないと「自分は凄い人間なのにそれに気づけない周りの人間はバカなんだ」っていう、歪んだ思考に辿り着いてしまう危険性があるからね。


 話がまた逸れた!!


 ここで言いたかったのは、実績も前例のない人間の作品に対して、物凄く力を入れて広告してくれるって事は、有り得ないって事。

 広告の費用も予算から出されるからね。割り振られる予算が安ければ、それほど大々的な広告は打てないワケです。


 全然広告しないって事はないでしょう。

 ただ、多分、その出版社のテンプレ的な広告手法を取るだけでしょうね。

 つまり、他の作品と同じような広告をするってだけ。


 ちなみに、なんですが。

 私は二社の出版社から選ぶってなった時に、そこについても編集者さんに聞きました。

「どんな広告をする予定ですか?」

 って。

 これも聞いておいた方がいいよ。


 返ってきた答えは、TwitterなどのSNSでの告知、そして、Google等から出せるWEB広告、でした。

 まぁ、テンプレだね。

 まずはそれをやっておけば間違いはないっていう。

 間違いはないよ。

 例えば新聞広告を打ちます! って言われたら、「いや、それはやるだけ無駄では……?」と思ったハズだよ。だって、私の作品の購読層が新聞購読層と合わないのは分かるしね。いや? 一部、被ってる? いやでも一部だよなぁ。


 って事で。

 出版社は、まぁ今までと同じ広告を打つでしょう。

 それは分かりました。


 じゃあ。


 作家側として、出版社がやってくれる事だけをボーッと見てるだけで、売れなかったら

「出版社の広告の仕方が下手だったから売れなかったじゃないか! 出版社がもっと力を入れるべきだった!!」

 って、思えばいいと、思います?


 違いますよね?


 作家側からも、出来うる限りの広告を考え、企画した方がいいんです。

 むしろ、出版社側であり、サラリーマンであり、予算に縛られた編集者さんでは、出来ない事の方が、多いと思いません?

 個人的には思い入れがあって、アレコレしてあげたくても、企業人として、出来る事に限界があると、思いません?

 つか、私は仕事で「この企業さんの力になりたい!」って思ってても、出来ない事の方が多いんだよ! いつも「牧野さん、ダメそれ、やりすぎ」って怒られるんだよ! 出来ない事の方が多いんだよ!!


 なら、私ら作家側が、アレコレやってみるんですよ。

 こっちは企業人じゃないからな! 自由に動ける!

 自分の作品を売る為に、多少の出費も覚悟する!

 多少の出費と労力を覚悟して、素敵広告の企画を立てるんですよ!!!


 言われるがまま、受け身でいる必要はありません。

 自分から能動的に動けばいいんです。


 だって、売れたいでしょ?

 続刊、出したいでしょ?

 自分の作品でしょ!?

 自分が動かなくってどうすんだよ!!!


 待ってるだけでは売れません。

 売れないと続刊出ません。

 そもそも、稟議が通らないと、出版そのものがコケます。

 稟議を通す為に、「ほら! こぉんな素敵広告を打つ予定なんだっ!! これだけ素敵広告なら、いろんな人の目に触れます! だから売れるかもしれないよ!? 重版、かかるかもしれないよ!? だから稟議通してェ!!!」って、全力を出す必要があるんです。


 じゃあ!


 どんな広告なら自分で企画できるのか。

 どんな広告なら自分で作れるのか。

 どんな広告なら自分で支払えるのか。


 それを考える必要がありますねー。

 それが難しいんですけどねェー。

 難しいからこそ、「マーケティング」という専門の分野があるんですけどねェー。


 って事で。

 どんなモンにするのかを、次回以降に考えていきますよ。

 今回はここまで!


 以上!

 それではね!!

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