企画と予算、稟議通過と計画頓挫のアレやコレ②
前回の続きでーす。
今までは、企画を動かす為の予算取りの話を書いてきましたね。
今回はそこからの続きになります。
それではいきまーす!
予算取りまでの間に、すっごい労力は既にかけられてるよ。
外部企業は見積もり書を作っていますし、その作業がいざ本当に依頼をかけられた時の為に、スケジュールも調整しますから。
編集者さんも細かい部分を計画し、調整しています。
裏で、作家は本文を商業に耐えうる内容に修正していっています。
ここで突然現れた「作家の修正作業」。なんでコレも、決定前──予算がつく前にすすめられてるかってーと。
予算の為に企画段階で時間かけてアレコレやってってんのに。
作業が発生していない作家を遊ばせておくのは時間が勿体ないじゃん。
それに本文修正って、作家と編集者の間を何度も何度も原稿が行き交うので、クッソ時間かかるしな。っていうか、たぶんコレが一番時間かかるんだよ。
いざ、外部企業へ発注がかかった後だとすると。
納期をズラす事はできません。
特に印刷会社ね。
これは私が実際に勤めてたから分かるよ。
印刷機のスケジュールってーのはね。日単位──下手をしたら、時間単位で組まれてるんだよ。物凄いパズルみたいに、様々な印刷物を機械で刷るとした時に、いかに遊び時間──機械が動いていない時間を減らすかを想定しながら、全部スケジューリングされてる。
ちなみに、部数が分かってるので、それが何時間で刷れるのかも分かってる。
だから本当に厳密にスケジュール組まれてるんだよ。
印刷会社にとって、印刷機が動いてない時間=無駄時間、赤字時間だからね。
できるだけ詰め込むんです。
……ああ、工場からの「部材、届いてねぇんだけど。どうすんだよ機械止まってんぞ」の悪夢の電話を受けた時の、頭から血が下がる気持ちを、今でも思い出せるわ……
その計画されたスケジュールの中の一つがズレるだけで、他を全部再スケジューリングする必要が発生してしまう。
それはそれは恐ろしい手間です。信頼も失います。
だから絶対に納期をズラせないの。
つまり。
発注前までに、本文を始めとした色々な物が、確定している必要がある。
ページ割から何まで全部が全部、その時点で決定してないといけないの。
そして、スケジュールも一緒に確定します。
ズラせないスケジュールです。
スケジュールが確定してるって事は、つまり、本の発売日も決まってるってこと。
そう。
発注できる段階──つまり『予算が下りる』段階で、全ては「確定」してるの。
逆に言うと、全てが「確定」していないといけないの。
そこを通り過ぎた後は、もう、よっぽどの事がない限り、覆されないの。
怖いね。
企画、ちゃんとしっかりくっきり、細かい部分まですべてやらないと、って気持ちになるよね。
ここまで話してると
「計画が
そんな事はないよ。
外部企業に見積もりをお願いし、スケジュールも全部組んで
「これだけしっかりやります! だからお金ください!!」
って、偉い人にお願いする事──
これを、『稟議を通す』っていいます。稟議に回す、ともいいますね。
偉い人に「OK☆」って承認してもらう事です。
が。
計画されたスケジュールや詳細内容。
それと『予算根拠としての見積書』。
これを見た偉い人が
「ダメだね。こんな事にお金出せんわ」
って、なる事も大いにあり得ます。
例えば予算「300万」で稟議を通そうとしたとして。
その企画の売り上げが、300万を上回ると予想できないと、ダメなんだよ。
赤字になっちゃう。
ちなみに、予算と売り上げがイコールでは勿論ダメですね。
だって、販売店へのバック、作家へのバック、そして企業の純利益。
それらのトータルで考えないといけないから、予算の倍以上の売り上げが見込めないとダメなんですね。
しかもさ。書籍は販売店に卸されたとしても、売れないと返却されっからなぁ。
そうだなぁ。
例えば1000円の本を1万部売るとするわ。
全部売れたとした時の売り上げ金額は1000万円です。
例えば、印刷会社に400万払うとします。
イラストレーターさんに50万払うとします。
装丁デザイナーさんに50万払うとします。
あと、輸送費や雑費等で、トータル100万かかるとします。
とすると、まず予算として『600万』欲しいな☆ って稟議に回します。
上記だと、全部売れてやっと売り上げ1000万です。でも、そこから、販売店へのバック、作家へのバックがあります。……どんぐらいバックあんの?
ええと。こっからは適当にググった結果から。適当な値を適用します。
これは私の場合の話じゃないからね。違うよ。
実際の数字なんて書けるワケないじゃん! 怒られるじゃきっと済まないよ!!
って事で。ググった数字を参考にしますね。
販売店へは、売れた本の分の20%がバックされるとします。
取次店へも、売れた本の分の10%がバックされるとします。
(※取次店っていうのがある事を、今初めて知ったわ)
ただし。
これは、「実際に売れた金額」からです。
なので、例えば一万部中、三千部が返却されたとした場合、
七千部売れたとするので、売り上げは700万。
しかし、そのうち3割は販売店と取次店へ支払われるので、490万が利益として残ります。
ただし。
作家へは刷った部数を元に印税が支払われます。
印税が10%だったとしたら、100円×1万部なので100万円ですね。
なので、作家への印税支払いして、残ったのが390万です。これが利益ですね。
で。
もともと。
600万の予算を出してもらったのに、
利益が390万しか出なかったとしたらさ。
大赤字やろ??
それが予想できてしまう場合には
「金出せんわ」
ってなるんよ。
これが、書籍化頓挫です。
だから編集者さんは、赤字にならない程度で、予算取りの金額を決めます。
また、返却されない程度の部数にしたりとかの調整も行います。
そして、「ほーら、赤字にはギリならない程度になりそうです!」って説得材料を用意しておくんです。
でも。
どんだけ編集者さんが頑張っても。
作家が頑張っても。
稟議が通らない事も
私の仕事でもゴロゴロあるよ。
予算取りの調整から、細かい仕様の決定の為に、何度も何度も何度も打ち合わせして、物凄く労力をかけたとしても。
稟議通らなくって頓挫して。
努力が全部無駄になる事とかね。
あるよ。
そりゃ、私はサラリーマンなので、働いた分のお給料は貰えます。
でも、会社としてはそれでは赤字です。
私のモチベーションもゴリゴリ削られ、パフォーマンスも低下するしな。
でもね。
結構、ある話なんだ。
多いよ。
マジで。
今まで私が担当した仕事で、稟議通らず流れた案件とかな。
数えたらキリがないよ。
ぶっちゃけ仕事として考えると、
ゴロゴロあんねん。
だから、イチイチ落ち込んでられないの。
ダメならすっぱり諦めて、気持ち切り替えないと仕事にならんねん。
だから、私は、書籍化計画の方も、頓挫が当たり前にありうる前提で考えており、全然怖くないんです。
そして。
計画頓挫が『本が面白くない』とレッテル貼りされたわけじゃないっていうのも、理解してるんです。
面白い・面白くない、の話じゃないのさ。
予算回収した上で利益を出せるか否か、なんだよ。
小説は、本文を読まないと面白いかどうか分らない。
売れてからじゃないと、面白いかどうか判別されない。
でも
売れるかどうかは
・広告
・表紙
・帯のキャッチコピー
の方が影響がでかい。
内容関係ないんだよ。
面白くても売れないと判断されたら
計画は
そういうモンなんです。
IT仕事もそうだよ。
どんなに素晴らしいモノだとしても。
予算をかけただけの効果が見込めない、と承認する人が判断したら、稟議は通らない。
内容と、稟議が通る・通らないは、
関係ないんだよ。
稟議を通すためには、内容如何ではなく、コスパ最大に良い状態に出来てるかどうかの方が、きっと大切なんだよ。
本文を面白いモノにするっていうのも、売れ続けるかどうかに影響はするだろうけれどね。
……なるほど。
そういう事か。
出版社にとって、初版は博打なんだ。
多分、多少の赤字は覚悟して出してると思う。
本当に利益を見込めるのは、重版がかかってからなんだろうなぁ。
重版がかかるかどうかは、売ってからじゃないと、本当に分からない。
何がバズるのかも分からない時代だし、
今は、庶民はマジでお金ないので、本という娯楽にお金を支払ってくれる人は本当に減った。
マジで。
きっと、今、書籍出版は博打なんだな。
なので我々作家と、そして二人三脚で歩いて行ってくれる編集者さんがすべきなのは
稟議通す人に
いかに
『この博打はする価値があります』
と伝えるか、なんだな。
イラストレーターさん選びも
広告の仕方も
全部が全部
『ほーら、これで博打に勝てる確率が上がりますよ!』
と見せる行為の一つなんだ。
……大変だね。
広告についても、マジで本腰入れて、考える必要がありそうだ。
編集者さんではなく、自分でも出来る事を考えないとな。
イベントやるか?
発売してから、じゃなくて。
発売までに、空気を盛り上げるイベントを。
何があるかな。
マジで、PV作る事を考えようかな。
そこはワシのポケットマネーで頑張るわ。
……ワシのポケットマネーで作れるPVってどんなや。
コレも自分で企画するしかないな。
って事で。
ここまでが、予算と企画、稟議通過と計画頓挫のアレコレ、でした。
どう?
参考になった?
でも、ここで出てきた数字やアレコレは、基本全部私の想像です。
仮定の上に仮定を重ねてるから、何一つ確かな事は書かれてないよ!!
だから鵜呑みにしないでね!!
って事で。
今回はここまで。
それではね!!
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