卒業生代表をかけた決死のレース
TN太郎
スタート 体育館にて
ザッ
キュッキュ
みんな、シューズの状態を確認したり、準備体操をしている。
そして、
XY高等学校の体育館のスタートラインに20名の参加者が立つ。
2階席にはXY高校の生徒、保護者、そして企業のお偉いさん達が行方を見守っている。
時は、2052年の2月。あと1週間で高校の卒業式だ。
今、スタートラインに立つのは、来週の卒業式で、卒業生代表の座を狙う20名の高校三年生たちだ。
かくいう僕もその座を狙い、3年4組の代表として、このスタート位置に立っている。
僕の名前はサトウフミヤ。生徒会長をしている。
そう、この高校では、生徒会長が生徒代表として卒業証書をもらうのではない。
卒業式一週間前に行われる、この卒業生代表選考レースで優勝した生徒が卒業生代表となるのである。
コースは、南校舎1Fの体育館をスタートし、北校舎3Fの視聴覚室にある3つのボールのうち、一つを取って、戻ってくる往復のレースだ。
つまり、3つのボールを取れなかった17名は復路にすら到達できない。
3年生10組までの各クラスから2名ずつの代表が1位を目指して走る。
暴力は禁止だが、特別なルールがある。
僕は、ポケットの膨らみをそっと触る。
「たのむぜ、相棒」
科学の発達した現代では、文具メーカーが、文房具に特殊能力を持たせることに、しのぎを削り、新たな文房具(Stationery with Secial Abilities)通称:SSAを開発している。
このレースではその文房具SSAの使用が認められている。
各クラスの代表は、1つずつ文房具を持つことができ、それぞれにスポンサーが付いている。
ゆえに、このレースは各階にあるカメラによって全国に中継され、文房具の新作発表会も兼ねている。
「頼みますよ。フミヤさん」
スポンサーのタカハシさんがガッツポーズで見送る。
「任せてください。絶対優勝しますから」
首をコキコキと鳴らしながら答える。
正直、大人の事情はどうでも良かったが、卒業生代表の座を他の生徒に譲りたくはなかった。
スタートラインに立ちながらスタートのイメージをする。
最初の難関は、やはり体育館の入り口だろう。
あそこを20人が一斉に通るのだ。
出遅れると、誰かと衝突の危険がある。
「位置について!用意!」
教頭先生のかけ声で、構える。
ちらっと横を見ると、同じ4組代表のヒロコがいた。
彼女もポケットに何かを入れている。
彼女も僕をちらっと見て、口だけで笑った。
「ドン!」
かけ声とともに、みんな一斉に飛び出す。
シャー!
「いただきー!」
一番最初に飛び出たのは9組のシゲルだった。
なんと彼のSSAは、そろばんだった。
『おぉーっと、一抜けしたのは9組のシゲルだ!』
全校のスピーカーから爆音の実況が轟く。
『彼のSSAは「そろばんMX2200」だ!これは、ジェットエンジンを搭載したそろばんを足に装着することにより、超加速できる代物だ!』
いきなりSSAの使用!そんなのありか・・・でも・・・
何かをまき散らしている。
『そろばんMX2200は、その加速に耐えられずに、一瞬で
入り口付近で、急に失速したシゲルはバランスを崩し、転倒する。
「馬鹿なのか」
走りながらつぶやいたが、右の方で
「痛!なんじゃこりゃ」
目だけで見てみると、マキビシのごとく珠が散乱しており、参加者の足下を崩している。
シゲルとみると、同じ9組のミナコにVサインをしてる。
そうか、ミナコを勝たせるために、いきなり他の生徒の邪魔になるようにしたのか。
「くそっ」
珠を踏まないように、慎重に入り口から出ていく。
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SSAには、大きく分けて3種類の文具がある。
まずは、
肉体増強系(Muscleタイプ)
これは、文房具を取り込んだり、装着することによって、使用者の行動能力を著しく向上させる。
つぎに、
物理攻撃系(Attackタイプ)
装備することで、直接攻撃することができる。しかし、このレースでは人間にそれを使うことはできないので、校舎や地面に向けてのみ使うことができる。
最後に
広範囲系(Rangeタイプ)
これは、広範囲に影響のある、ガスや音楽などを出す。狭い校舎であれば、効果てきめんであるが、使用者も影響を受ける。
参加者はこのMタイプ、Aタイプ、Rタイプのどれかを持っている。
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シゲルのSSAはMタイプ。足にそろばんを装着するという、小学生の発想を具現化した代物だった。
体育館を抜けた俺は、他10数人たちともみくちゃになりながら、廊下を走る。
俺の前には10人以上居る。
ここで、このまま廊下を進むか、2階に上がるかの分かれ道となる。
北校舎への渡り廊下は1Fと2Fにあるから、どのルートで行くかが勝敗を左右する。
******選択肢を選んでください*******
階段を上って、南校舎2Fへ
https://kakuyomu.jp/works/16817330660879705729/episodes/16817330660881770732
廊下を進んで、1Fから北校舎へ
https://kakuyomu.jp/works/16817330660879705729/episodes/16817330660883104659
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