第36話 奇襲
ジーオーとフォージは、とある森の中を走っていた。というより、逃げていた。
それは先ほどの戦闘で、ジョーとカイドウに事実上敗北したからである。
その光景は、完全に雑魚のやられ方だ。
「もういいだろう……」
フォージが走る足を止める。
ジーとオーも立ち止まり、息を切らしている。
「このままじゃ、四天王に合わせる顔がないよ」
「そしたらうちら殺されちゃうよ」
「確かにな……。ただ単純に敗北するのならいいのだが、我々は敵前逃亡まがいのことをした。その代償は高くつくだろう……」
フォージが今後の行動を考える。
「フォージが慌ててる……」
「珍しい光景……」
ジーとオーは呑気にそんなことを言っているが、内心焦っていた。
「このままおめおめと帰るのは駄目だ。なら、成果を上げるまで戻るのは止めよう」
「確かに」
「一理ある」
ジーオーとフォージの考えは一致した。
「このままレジスタンスに攻撃を続ける」
「戦略は?」
「考えあるの?」
「ある。この森を使うことだ。森の中は視界が悪い。そこにやってきたレジスタンスに奇襲攻撃を仕掛ける。問題はレジスタンスの連中がいつやってくるかだが……」
「四天王に殺されるよりはマシ」
「命は一つしかない」
「それもそうだな……。その方が好都合だろう」
こうしてジーオーとフォージは、森の中でいつ来るかも分からないレジスタンスを強襲することにした。
その決定からわずか一日。レジスタンスの一行がやってきたのだ。
「数は?」
「20くらい」
「多分斥候」
「斥候にしては少し多い気もするが……。まぁいい。仕掛けるぞ」
そういって三人は、木の後ろで見えないように待機する。
ジーオーとフォージの間を、レジスタンス一行が通り抜けようとした時。
フォージが合図を出して変身し、レジスタンスの前に躍り出る。
そしてフォージは自分に近い一人を狙い、攻撃を仕掛けた。
「死ねぇ!」
渾身の拳を入れる。この一撃が入れば、人体を引き裂くほどの衝撃を与えるのは必至だ。
その人が普通の人間であれば。
フォージの拳は、いとも簡単に止められた。
「なっ!」
フォージは、拳を入れた相手をよく見ると、そこには見たことのある装甲を纏った人間がいた。
イツキである。
「また会ったな。フォージ」
イツキが友人に挨拶するように、軽く会話する。イツキの後ろでは、カイドウがジーオーの攻撃を受け止めていた。
フォージは冷や汗が流れる感覚を覚える。だがそれは、すぐに殺意へと変わる。
フォージの後ろからモニカが現れ、他のレジスタンスの戦闘員に攻撃を加えようとした。
しかし、戦闘員もむやみに突っ立っているわけではない。すぐにモニカに銃口を向け、射撃を開始する。
モニカ自身のダメージは軽微であるものの、モニカに隙が生まれる。その間に戦闘員は来た道を引き返す。
「ググ……!」
モニカは戦闘員を逃がした怒りを、イツキに向ける。
「かかってこい、下衆ども。まとめて消してやる」
そういってイツキはソード・デバイスを装填し、剣を召喚した。
「この……!」
見事に挑発に乗ったフォージは、刀を取り出してイツキに襲い掛かった。
何度か刃をぶつけ合い、鍔迫り合いとなる。
その瞬間、イツキは急に剣の向きを変えた。すると刀は剣の刃に沿って滑る。そのままグルリと剣を振り回し、フォージに攻撃を与えた。
「グゥ……!」
「もっと来てもいいんだぞ、ほら」
そういってイツキは攻勢を続ける。
一方、カイドウとジーオーの戦いは、森の中を疾走しながら行われていた。ジーオーの銃撃は、カイドウに当たらず木々に命中している。
「「ホント、敵に回したら面倒なんだからっ!」」
ジーオーは文句を垂れながら、一度立ち止まって精密射撃を行おうとする。
その瞬間を待っていたかのように、カイドウは行動パターンを変えた。木を使って横移動を止め、まっすぐジーオーのほうへと全力で飛び上がる。
垂直飛びなら170m飛べるカイドウの脚力で、瞬時にジーオーとの距離を詰める。
その勢いのまま、膝蹴りを入れる。ジーオーは思わず拳銃でガードしてしまう。その瞬間、明らかに何か破断したような金属音が響き渡る。
ジーオーは後ろに吹っ飛ばされ、膝立ちになってしまう。
ジーオーはすぐに拳銃をカイドウの方に向けるが、その時に拳銃が破損していることに気が付く。
「「チッ!」」
ジーオーは拳銃を捨てると、カイドウの方へ走って向かう。そのまま慣れてないようなパンチでカイドウを攻撃する。
しかし、それらは全て見透かされているように回避された。
さらにカイドウは、ジーオーのパンチをペシッと弾くと、腹部に全力のパンチを叩き込む。
「「ヴッ……!」」
いくら装甲が存在するといえ、それにも限界がある。
全力パンチによって、ジーオーの体は地面を転がる。
タイミングよく、そこにフォージも転がってきた。
「さて、後はどうするかだな」
「面倒だ。ここで消しておく」
そういって必殺技を発動しようとした時だった。
イツキとカイドウの上に影が落ちる。次の瞬間、イツキたちとジーオーたちの間に何かが勢いよく落下してくる。
「それ」は、歪な姿をした人型であった。
「お前は一体……」
イツキは、何か嫌な予感がした。
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