第35話 強襲
「……ということで、カイドウが仲間になりました」
作戦室にて紹介されるカイドウ。それを丸い目で見ているジョーと指揮官。
「カ、カイドウ……、お前、本当に『オール・ワン』を裏切るのか……?」
ジョーが若干震えた声で聞く。
「俺は傭兵だからな。報酬次第では敵にも味方にもなる」
「いやまぁ、それならいいんだが……」
「俺は、新しい俺を肯定するだけだ」
昨日まで敵だった人間が、急に味方になるのは想定外だろう。イツキだって未だに味方になったのを疑っている程だ。
「さて。これで新たな戦力を得ました。この辺りで大規模な戦力増強を図りたいと思います」
「戦力増強ですか? それならカイドウがいる時点で戦力は十分だと思いますが……」
イツキが疑問を投げかける。
「いえ、それだけではありません。カイドウの持っているバックルとアイテムに蓄積している戦闘データを引き出し、3人の格闘者のデータを統合します」
「統合……?」
「つまりは戦闘データから個人の戦闘をアシストするようなシステム構築を狙うと言うことだな?」
カイドウが答える。
「その通りです。そのためには、最新の戦闘データが必要になります。格闘者はバックルとアイテムを提出するように」
「そうなるとローテで提出するしかないな」
「なら自分のから提出します」
そういってイツキがバックルとデバイスを取り出す。
「ではイツキの物から吸いだしましょう。次はジョー、最後にカイドウの順番でいいでしょう?」
「問題ない」
「異議なし」
こうしてデータの抽出が始まる。
ちょうどそのころ、四天王がいる大広間ではジーオーとフォージが謁見していた。
『スクリプトが裏切ったのか』
『いつかするとは思っていたが、案外我々の思惑通りに動いてくれたな』
『そんなことよりも、レジスタンスの技術力が上がっていることが問題だ。これは由々しき事態だろう』
『然り。スクリプトが敵になったのなら、ヤツもまとめて消し去ればいい』
『出来るな? ジーオー、フォージ』
「もちろんです」
「当然です」
「今度は確実に殺します」
『よろしい。では行け』
「御意」
そういってジーオーとフォージは消えていく。
誰もいなくなった大広間で、四天王同士が話をする。
『ヘリクゼンがここまで来る事態が発生する可能性が上がったな』
『カイドウも味方している。正直ジーオーとフォージでは歯が立たないだろうな』
『その時はプロシージャを使ってでも止める必要があるだろう』
『そのための布石は打ってある。レジスタンスの一人くらいは消してくれるはずだ』
天井から吊るされたベールに写る影が不気味に揺れた。
数時間後、ジーオーとフォージはインスタンスに程近い森へと来ていた。彼女らの後ろには、強化戦闘員数体がいる。
「残った強化戦闘員もたったこれだけか……」
フォージがそんなことを呟く。
「そんなの問題じゃないよ」
「カイドウが裏切ったのが問題だよ」
「それもそうだな。カイドウには裏切った罰を与えなければな」
そういってジーオーとフォージはバックルを装着、アイテムを取り出す。
「「変身」」
「……変身」
こうしてジーオーとフォージは変身した。そのまま全速力でインスタンスへと突撃する。
すると、インスタンスから二人の人間が走ってきた。
ジョーとカイドウである。
「早速来やがった!」
「すぐに片づけてやる」
ジョーとカイドウもバックルを装着し、アイテムを装填した。
「「変身!」」
格闘者に変身したジョーとカイドウは、そのまま戦闘に入る。ジョーはジーオーを、カイドウはフォージとモニカを相手にするようだ。
ジーオーは得意の距離から射撃をする。その弾丸を、ジョーは剣で弾いていく。ジョーはジリジリとジーオーに近づいていく。
「……今!」
ジョーは剣を縦に斬り上げた。すると、その時に弾いた弾丸が跳弾して、ジーオーへと命中する。
「「うっ!」」
ほぼ不意打ちを食らったジーオーに、ジョーは途端に距離を詰める。その勢いで突きを入れる。
しかし、ギリギリの所でジーオーは回避した。
「ちぃ!」
ジョーは突っ込んだ勢いそのままに、一旦距離を置く。
ジョーが振り返ると、そこには拳を高く上げた強化戦闘員の姿があった。
突然のことに、ジョーは無理やり剣を拳に合わせる。なんとか拳を弾いたが、強化戦闘員の攻撃は止まない。ジョーはただ地面を転がるように回避しているしかなかった。
一方でカイドウのほうは、フォージの刀を受け止めて回避しながら肉薄した攻撃をしている。
横からモニカがちょっかいを出すように肉弾戦を仕掛けてくるが、カイドウはそれも容易くいなす。
「敵になると急に厄介になるタイプか……!」
「あいにく戦闘経験はこっちが上なのでね」
そういってカイドウは、足蹴りを入れてフォージの体勢を崩す。そのまま拳をフォージの顔面にぶつけようとした。
しかしそこに、モニカが横からタックルをしてくる。カイドウが気が付いたときには、すでに体が横に動いていた。
カイドウはそのまま吹き飛ばされてしまう。
「くっ……!」
カイドウが起き上がったところに、ジョーがやってくる。
「大丈夫か?」
「大丈夫とは言えないな。ニ対一じゃ不利だ」
「そうなれば、やることは一つだな」
「あぁ」
そういってジョーはグリップを納刀し、一度グリップを捻る。
対してカイドウは、バックル横のボタンを押す。
『シャープ ソードフィニッシュ!』
『スクリプト レイズアタック!』
飛び上がった二人は、それぞれ相手した方に向かってキックをする。
ジーオー、フォージとモニカは対抗しようとしたが、攻撃対象が自分ではないことを悟った。
そして、真の目的を理解する。
強化戦闘員だ。
強化戦闘員数体は、ジョーとカイドウのキックによって、完全に撃破された。
爆発の中、立ち上がったカイドウは、ジーオーたちの方を見る。
「まだやるか?」
「くっ……。今日はこの辺りにしてやる」
そういってジーオーとフォージは去っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます