第34話 協同

 イツキとフォージ、ジーオーとの戦闘が始まった頃。インスタンスの屋上で、ミネ博士がイツキの戦闘の様子を双眼鏡で見ていた。

「二人が一人になる格闘者と、一人が二人になる格闘者ね……。どちらにしても、厄介な存在には間違いないわ」

 そんなミネ博士の後ろから、一人の人間が現れる。

 カイドウだ。

「今日は来てくれてありがとう」

「どうも。話があるんだろう?」

「そうね。結論から話しましょう。現実存在安定システムの雛型が完成したわ。あなたが『オール・ワン』から錠剤を貰う必要がなくなったわ」

「……そうか」

 ミネ博士からの報告に、カイドウは溜息のように言葉を吐く。

「どう? レジスタンスに来る気になったかしら?」

「やれるもんならやっているさ。俺だって人間だ。出来ることなら人間の味方をしたい」

「ならうちに来るのはうってつけね。いまなら当直室に配属できるわよ?」

「しかし、『オール・ワン』の影響力や戦力はかなり大きい。そんなヤツに本当に勝つつもりでいるのか?」

「当然よ。そうじゃなければレジスタンスなんてやっていないわよ」

 そういってミネ博士は再び双眼鏡を覗く。

「今こうしている間にも、彼はレジスタンス、そして自分のために戦っているわ」

 ミネ博士はイツキの方を見る。イツキは三人の格闘者を相手に必死に戦っていた。

「悩む必要なんてどこにもないと思うけど?」

 カイドウは以前無言を貫いている。だが、その目は何か決心したようだ。

 やっとカイドウは口を開く。

「『オール・ワン』、ひいては四天王を敵に回すと厄介だぞ。それでもいいのか?」

「もちろんよ。何度も言うけど覚悟の上だから」

 カイドウはそういってバックルを取り出した。そしてそれを腰に装着する。

 一方、イツキの方は一方的な殴り合いの状態になっていた。

 フォージの連続パンチを食らい、その両脇からモニカとジーオーのキックが炸裂する。

 それによって、イツキは後ろへ吹っ飛ばされた。

「どうだ? そろそろ降参する気になっただろう?」

 モニカがイツキに問いかける。

 しかしイツキは、剣を杖代わりにして立ち上がった。

「まだだ……。俺はまだ負けていない……」

 イツキは立ち上がって、剣を構える。

「「あなたはなんで戦っているの? そんなにボロボロになって、何をしたいの?」」

 ジーオーが尋ねる。

「何がしたいって、そんなの一つしかないだろ……。俺は会ったこともない誰かのために、人間の未来を託すために戦っているんだ!」

 イツキが叫ぶ。自分の存在意義を確かめるように。

 そこに、イツキの後ろから何かが飛んでくる。

『スクリプトⅡ レイズアタック!』

 フォージたちの前に、何かが大爆発する。

 その爆発地点にいたのは、カイドウであった

「カイドウ……!」

「スクリプト……、一体何のつもりだ?」

「何のつもりって? 当然、レジスタンスの味方をしているのだが?」

「「スクリプト……! 裏切ったのか!」」

 ジーオーが大声で問いただす。

「そうだな、そっちから見ればそうなるだろうな」

「カイドウ……」

 イツキは、カイドウを見る。

「ま、いろいろとあったが、これからよろしく」

 そういってカイドウはイツキの横に並ぶ。

「どうするフォージ? 今すぐ四天王に報告する?」

「いや、ヤツの首でも持って帰って報告すれば問題ないだろう」

 フォージは刀を構えて言う。ジーオーも銃を構えている。

「カイドウ、本当にレジスタンスに?」

「そうだ。とにかくこの場を乗り切るぞ」

 そういってカイドウはファイティングポーズを取った。

 そして両者は再び戦いを始める。

 カイドウはジーオーを、イツキはフォージとモニカを相手にする。

 カイドウはジーオーの銃口を上手くそらし、銃撃を躱していく。その間にカイドウは拳をジーオーにぶつけていった。

「どうした? 俺より弱くなったんじゃないか?」

「「裏切者が……! うちらが直々に成敗してやる!」」

 ジーオーはいったん後ろに下がり、銃撃を加えていく。カイドウはそれを予知していたかのように回避していく。そして徐々に走り出して蹴りを入れた。

 その横でイツキは、フォージたちを相手に戦う。剣と刀が鍔迫り合いをし、その間にモニカが攻撃を加える。その攻撃も、イツキは剣で対応していた。

「どうして我々の理想が理解できない!? 『オール・ワン』に従えば、全てが順調に進むんだぞ!?」

「合理的とは言えないね」

「確かに合理的かもしれないが、そこには人間の未来がない。人間が生きる世界には、確かな未来がないといけないんだ!」

 そういってイツキは剣を振るう。

 そしてジーオーとフォージたちが追い込まれる。

「ここで決める!」

 イツキとカイドウは、必殺技を決める。

『ヘリクゼン ファイターキック!』

『スクリプトⅡ レイズアタック!』

 イツキとカイドウは飛び上がると、そのままキックをお見舞いする。

 二人のキックが命中し、爆発が起きる。

 爆発の中心には、地面に伏しているジーとオーとフォージの姿があった。

「く、クソ……。まさかスクリプトに負けるとは……」

 フォージたちの周りに煙が発生し、そして消える。

「何とかなったか」

 そういってイツキとカイドウは変身を解除する。

「カイドウ……」

「ま、これからよろしくな」

 カイドウは手を差し出し、握手を求める。

「……あぁ、よろしく」

 イツキも手を差し出し、握手し返した。

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