第33話 宗教
ジーオーとの戦いから数日。
いつもの如く、監視の日々が続いている。
そんな中、監視任務に就いていた戦闘員が、何かを見つけた。
「こちら屋上、北のほうから謎の集団が接近。あれは……人間?」
その知らせを受けて、当直に入っていたイツキと戦闘員が向かう。
ある程度近くまで接近すると、そこには確かに大勢の人がいた。しかしそれだけでは無かった。
なんと人々に囲まれるように、「オール・ワン」の強化戦闘員が数体いたのである。
「強化戦闘員!? なんでここに!?」
レジスタンスの戦闘員は銃を構え、イツキはバックルを装着した。
その時、人々はイツキと戦闘員のほうへと押し寄せてくる。
「駄目だ駄目だ! 彼らを攻撃してはいけない!」
「そんな罰当たりなことしたらイカン!」
「ちょ、ちょっと!」
数人がイツキの体をガッチリと固める。他の戦闘員もそのような感じだ。
「どうして人間の敵と一緒にいるんですか!? 奴らを排除しないと!」
「排除だって!? そんな罰当たりなことしてはいけない!」
「神様の使いを攻撃しようだなんて、お前は悪魔に憑りつかれたのか!」
「どうでもいいから、離してください!」
そういってイツキは半ば無理やり、ベータ・プラス・デバイスを装填する。そして片手でバックルの前面を押した。
『アプルーブ!』
バックルから流体状の金属があふれ出し、まとわりついていた人々をイツキから引きはがす。
そしてヘリクゼン・ベータ・プラスへと変身した。
「人間の敵は排除する!」
そういってイツキは、強化戦闘員のほうへと走り出した。
しかし、イツキの前に複数人が立ちふさがる。
「あぁ、もう! あなたたちはなんなんですか!?」
イツキはイラつきの限界に達し、人々に聞く。
「我々は『プロシージャ』。『オール・ワン』を崇拝し、その願いを実現するために有志が集まった団体だ」
集団の中で一番年配の男性が答える。
「それってつまり、宗教団体?」
「宗教とはまた違うが、そう捉えてもらって構わない」
「それで? どういうことやってる宗教で?」
イツキは警戒しながらも、話を聞くことにした。
「我々は『オール・ワン』が実現する世界のためなら、命すらも投げ捨てることを信条とした団体だよ。ここにいる信者は、皆死ぬことを恐れていない」
「……は? 死ぬことを恐れない?」
あまりの潔さに、イツキは思わず聞き返してしまった。
「『オール・ワン』が何をしているのか分かってるんですか!?」
「彼らは人間のために新しい世界を作ろうとしているのだ。我々の命はそのための薪に過ぎない」
「違う、『オール・ワン』は人間を破滅に追いやる悪の集団だ! そこにいる強化戦闘員だって、人間を襲っている!」
「それが『オール・ワン』のためになるなら本望だ」
そんな感じの押し問答が続く。
するとそこに、三人の影が現れる。ジーオーとフォージだ。
「人間も一枚岩ではないの」
「それもまた人間なの」
「彼らは望んで命を投げ出している。とても美しいじゃないか」
フォージがそんなことを言う。
さすがにイツキも、言葉を失った。そして絞り出すように言う。
「こんなの間違っている……。人の命はそんな簡単に捨てていいような物じゃない……」
「そうか。ならどうやって止める?」
フォージはそう言いながら、何かを取り出す。そしてそれを腰に装着した。
「自分ならこうする」
そういって大きな手裏剣を取り出した。上下で色が分けられている。それを腰に装着したバックルに上から装填する。
『フォージ!』
するとフォージの姿がブレ始め、姿が二つに分離する。しかもバックルも二つに増えた。ただ、バックルに装填された手裏剣状のアイテムは縦に割れて分裂している。
『アナライズ!』
「行くぞ、モニカ」
「了解」
「「変身」」
『ローリング!』
二人はバックルのアイテムをV字になるように回転させた。
バックルから流体状の金属が、それぞれの体を包み込んでいく。
『ソードマン フォージ!』
二人の格闘者が現れた。
「格闘者フォージと」
「格闘者モニカ」
「いざ、参る」
煙の中から刀のような物を取り出し、それをイツキに向ける。
「さぁ、どちらが正しいか決めようか」
フォージは挑発する。
だんだんと状況を整理できたイツキは、ソード・デバイスを装填して剣を召喚した。
「そっちがその気なら、こっちもその気で行くぞ」
フォージの後ろで、しれっとジーオーも変身している。
そのままイツキは戦闘に入った。
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