第31話 結合
インスタンスに戻ったイツキたちは、ミネ博士に呼ばれて作戦室に向かう。
「カイドウを仲間にします」
開口一番、ミネ博士がそんなことを言う。その発言に最も反応したのは、イツキとジョーであった。
「ミネ博士! そんなことが出来るとは思えません!」
「そうですよ。あいつは完全に『オール・ワン』の手先です。今更どんな言葉を投げかけても、我々に味方するとは思えません」
「確かにそうかもしれません。ですが、もし突破口があるなら、その限りではないでしょう」
「突破口、ですか?」
「彼が我々に見せてくれた現実存在安定剤。それに似た装置を作ることが出来れば、カイドウは傭兵として『オール・ワン』にいる必要がなくなります」
「そうか、カイドウは報酬として自分の存在の安定化を貰っている。それがレジスタンスの技術でできれば、カイドウは敵から味方になる可能性が上がるってわけか」
ジョーはそのように考える。
「その通り。味方にならなくとも、敵として対峙することはなくなるはずです」
「なるほど……。それは一考の余地がありますね……」
イツキは納得する。
「そういうことで、これから技術研究班は現実安定化を図れるシステムの開発に乗り出します」
このようにミネ博士は宣言した。おそらく技術員の数名が酷使されることだろう。
各員が作戦室を出る中、イツキはミネ博士に呼び止められる。
「これを渡しておくわ」
それは、デバイスに似た装置のようなものであった。しかし、ボタンの類いはなく、表面も無機質であった。
「これは?」
「ベータ・デバイスの拡張装置よ。開発はこれから行うつもりだったけど、現実安定システムを優先させるから、中のデータは空っぽね」
「それ渡す必要性あります?」
「一応データの蓄積機能は装備しているから、戦闘の際には携帯しておいて」
そういってミネ博士は去っていった。
イツキは貰った拡張デバイスを見て、面倒くさそうな顔をする。
「何も入ってないデバイス貰ってもなぁ……。使い道がない……」
そんなことをぶつくさと言いながら、イツキは当直室へと向かった。
それから数日後。インスタンスの警戒をしていた戦闘員が叫ぶ。
「東より影二つ見ゆ! 繰り返す、東より影二つ見ゆ!」
当直に入っていたジョー、そしてそこらへんを散歩していたイツキが現場に急行する。
そこには、ジーとオーの姿があった。
「ジーオー、何の用だ?」
「何の用って?」
「それは当然?」
「「レジスタンスの排除」」
二人の声が重なる。そこには少しばかりの恐怖と重圧が含まれていた。
「とにかくお前らは俺たちが止める!」
そういってイツキとジョーはバックルを装着する。
「君たちが戦うの?」
「うちらに勝てるの?」
「勝てないよ」
「うちら強いよ」
「話し合いならしてくれるのか?」
「ま、ないだろうな」
ジーオーの言葉に、イツキとジョーが答える。
「ならうちらも行くよ」
「変身するよ」
そういってジーとオーは変なバックルを装着する。そして左右対称になるようにバックルと手にした。四角い小さな扉のようなアイテムだ。
それをそれぞれ自分のバックルに装填する。
『ジー!』
『オー!』
するとジーとオーの体が半透明になる。
「な、なんだ?」
イツキとジョーは驚く。
ジーとオーはそのまま重なり合い、一人の人間になった。その際、お互いのバックルが合体する。
『コネクティング!』
一人となったジーオーは、腕を回してバックルのすぐそばに手を添える。
「「変身」」
そのままバックルに装填したアイテムを畳む。すると、扉が閉じるようにアイテムとバックルが変形し、表面に紋様のようなものが浮かび上がった。
バックルから流体状の金属が体を這うように移動し、装甲が浮かび上がる。
『ガンナー ジーオー!』
変身が完了すると、以前素手で持っていた拳銃を取り出す。
「「うちらに勝てるかな?」」
そういって銃をイツキたちに向ける。
「へ、変身!」
「変身!」
イツキとジョーは慌てて変身すると、その場から回避する。すると、先ほどまでいた場所にジーオーからの攻撃が当たる。
イツキは剣を召喚し、ジーオーとの間合いを詰める。そのまま接近戦となるが、ジーオーは銃を使って上手く剣を受け止める。そして剣を受け止めると同時に銃撃をイツキに浴びせていく。
「ぐわぁ!」
イツキが下がると、今度はジョーがジーオーと近接戦闘をする。ジョーの剣は光線であるため、銃で受け止めることは出来ない。だがジーオーは、ジョーの立ち捌きをヒョイヒョイと避けていく。
ジョーに対しては銃撃することなく、銃床で打撃を加えたり、足払いからの蹴り上げでノックアウトにしてしまう。
「つ、強い……!」
「「そっちが弱いんじゃないの? これじゃあ戦い甲斐がないよ?」」
そんなことを言いつつ、ジーオーがイツキにゆっくりと接近してきた。
イツキは何か打開策がないか、必死に考える。その時、ある物を思い出した。
ミネ博士から貰った拡張デバイスである。今は空っぽのデバイスだが、あることをすればパワーアップが可能なのではないかとイツキは考えたのだ。
イツキは拡張デバイスを握りしめ、必死に願う。
「頼む……、力が欲しい……!」
イツキが願うと、手の中から光があふれ出した。
「「何の光?」」
輝きが収まると、イツキの手の中には「プラス」と書かれたデバイスがあった。
それと同時に、イツキはその使い方を理解する。
「俺は、一秒前の俺より進化する……! 自分の願いを叶えるために、前に進む……!」
イツキはベータ・デバイスを引き抜き、変身を解除する。そのベータ・デバイスの横にプラス・デバイスをセットした。
『ドッキング!』
そして再びボタンを押す。
『ベータ・プラス!』
バックルの上部に装填する。
『スキャニング!』
いつものように腕を回し、ポーズを取った。
「変身!」
『アプルーブ!』
流体状の金属が、ベータのようにイツキの周囲を取り巻く。そして装甲を生成しながら、イツキの体に装着された。
『ファイター ヘリクゼン・ベータ・プラス!』
ヘリクゼン・ベータの新しい形態である。
「俺はお前を、書き換える!」
イツキはジーオーに向けて指を指し、そして握りこぶしを作った。
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