第22話 対戦
カイドウとの戦闘が終わり、イツキたちはミネ博士に結果を報告した。
「再変身……。確かに気になる変身ね……」
「再変身したスクリプトⅡとかいうヤツには、これまでの攻撃は無意味のようにも感じました」
「自分のファイターフォーム・パワードミサイルも効きません。この姿で攻撃が通らないとなると、これ以上は難しいと思います」
「……言いたいことは分かったわ。今まで以上のパワーアップした戦闘力が欲しいんでしょう?」
「ま、そうなりますな」
「シャープバックルのほうは厳しいとして、イツキのデバイスならいけるかもしれないわ」
「マジっすか」
「ただそれには、これまで使ったデバイスの全データを転送する必要があるわ。とりあえず、使ったことのあるデバイスの半分を出して」
「全部じゃないんですか?」
「全部渡されたら、次の戦闘の時どうするの?」
「あぁ、それもそうですね」
「でも、アルファ・デバイスからもデータを取り出す必要があるわ。それは今すぐ超特急で対応するわね」
そういってミネ博士は手を出す。
イツキはその手に、アルファ・デバイスを置いた。
「じゃ、1時間後に来てちょうだい。それまでには終わらせるわ」
そういってミネ博士は、アルファ・デバイスを何かの装置に入れ、パソコンに向き合う。
これ以上はミネ博士の邪魔になるため、イツキとジョーは研究室から出た。イツキはそのまま研究室の前でミネ博士の作業が終わるのを待つことにし、当直のジョーと別れる。
そして1時間ほど後、ミネ博士が研究室から出てきた。
「あら、ずっとそこにいたの?」
「まぁ、やることもないですし……」
「そう。でもあなたを探す手間が省けたわ。アルファ・デバイスを返すわ」
きっちりとアルファ・デバイスを返却してもらう。
「それじゃあ、使った事のあるデバイスを……」
そういってイツキは、いくつかのデバイスをミネ博士に渡す。
「戦力としては少なくなるかもしれないけど、がんばってちょうだい」
「了解です」
デバイスを渡したイツキは、そのまま個室へと戻った。
数時間後。当直の交代のために、当直室へと向かうイツキ。するとそこでは、ジョー含めて複数の戦闘員が机に向き合っていた。
「どうしたんですか?」
「おう、イツキ。ちょっとコレ見てくれ」
そういって見せられたのは、パソコンの画面に映し出された画像データである。
「……これが何か?」
「どうも人影を見たという監視員の報告が上がってな。その時撮ったっていう写真を見てたんだ」
「……それ、映像データじゃないと無意味じゃないですか?」
「こまけぇこたぁ気にすんな。とにかく見てくれ」
イツキは文句を言おうとも思ったが、言葉を飲み込んでしぶしぶ画像を見る。
「この辺に写っているらしいんだが……」
「……いやぁ、この解像度では厳しくないですか?」
「言ってやんなって。監視員も頑張ってるんだからよ」
そしてジョーは、パソコンの横に置かれた地図を指さす。
「仮にこの写真の通りなら、おそらくこの辺にいたってなるんだが……」
そこには、インスタンスの東と思われる方向に生えている林がある。
「この方向って、よく『オール・ワン』が来る方向ですよね?」
「あぁ、偶然ではないような気がする……」
しかし、当直室でうんうん唸っていても仕方がない。
「念のため、ミネ博士に連絡でもしておくか……」
そんな感じで話がまとまった時である。
カンカンカンと金属音が3回鳴り響く。
「この合図は……!」
「『警戒態勢に移行せよ』の音!」
戦闘員は直ちに警戒配置につく。
イツキとジョーは、すぐに戦闘出来るように、バックルを装着する。
そのまま数分の時間が過ぎた。すると、大声が響き渡る。
「『オール・ワン』だー! 東に二人!」
その声に、イツキとジョーは一目散にインスタンスを出た。そして東の方向へと走る。
そこには、ルビーとスイフトが立っていた。
「この間ぶりね」
「その節はどうも。それで、今日はどういった用件で?」
「君たちの実力を測りにきた、といったところですね」
「そ。もしかしたら死んじゃうかもしれないけど、恨まないでねー」
そういってルビーは腰にバックルを装着し、スイフトは巨大な鎌のようなものを背中から引っ張り出す。
そしてルビーはガラス板のようなものを、スイフトはコインのようなものを取り出す。
「変身っ」
『リーディング!』
「……変身」
『メイキング!』
ルビーはガラス板をバックルの左側から装填する。すると、バックルから少しはみ出たガラス板が発光し、バックルから流体状の金属があふれ出す。当然の如くそれは、ルビーの体を包み込んで装甲を形成する。そしてその手には、銃のような物が作り上げられた。
一方でスイフトのほうは、メダルを鎌の付け根の部分に装填する。するとそれに呼応するように、地面から流体状の金属がスイフトの体の周りに渦巻くように展開される。そしてそれは、装甲へと変化してスイフトの体に装着された。
『ガンナー ルビー!』
『サイザー スイフト!』
それを見たイツキとジョーは、それぞれのアイテムを取り出す。
『アルファ!』『チェーンソー!』
『シャープ!』
『スキャニング!』『サード・スキャニング!』
『セッティング!』
「変身!」
『アプルーブ!』
『ドローイング!』
『ファイター ヘリクゼン・アルファ! パワードチェーンソー!』
『ソードマン シャープ!』
イツキたちも変身が完了すると、どちらが合図するわけでもなく、一斉に走り出す。
そのままイツキはルビーを、ジョーはスイフトを相手にする。
ルビーの銃撃を体のひねりで躱しながら、イツキはルビーへと近づく。イツキのチェーンソーは近接戦闘用。接近しなければ使い道がないのである。
「うらっ!」
イツキは銃撃を数回躱して、チェーンソーを振り回す。ルビーはそれを、手に持っている銃で受け流していく。
「そんなに銃を傷つけちゃ、使い物にならなくなるだろ!」
「残念。ヘリクゼル製だから簡単に修復出来ちゃうの」
銃口がイツキの胴体に向けられ、そのまま射撃される。
「グァッ!」
イツキは後方に吹っ飛ばされてしまう。
「くっ……、このっ!」
それでもイツキは負けじと戦いに向かう。
一方でジョーは、剣を振るいながら、大鎌と鍔迫り合いをする。
「そんなデカい武器で振り回しにくいだろ!」
「あいにく慣れているものでね」
何度か斬り合いをするものの、ジョーは決定打に欠けているのを感じる。
それを分かっているのか、スイフトはどんどん攻撃の手数を増やしていく。
「くぅ……!」
ジョーは次第に劣勢になっていくのを感じる。
「どうしたんですか? これが限界なんですか?」
「っせぇ!」
そういってジョーは大きく剣を横に振る。しかし手ごたえは感じない。
「どこ見てるんですか?」
スイフトの声が、ジョーの後ろから聞こえてくる。
振り返ったときには、すでに大鎌が降り下ろされていた。
「ぐわぁ!」
そのままジョーは吹き飛ばされてしまう。
そこにイツキも吹き飛ばされる。
「イツキ……、無事か?」
「この感じ……、無事じゃないです……」
お互い地面に伏している状態だ。そこにルビーとスイフトが迫ってくる。
だが、ルビーが何か思い出したような挙動を見せた。
「今日はここまでにしましょ」
「……そうですか。まぁ、実力は十分に理解出来たので、別に問題はないでしょう」
「じゃ、そういうことで。じゃあねー」
ルビーとスイフトは変身を解除してその場を去った。
「こりゃ大負けだな……」
ジョーはそんなことを言いながら、天を仰ぐ。
イツキは悔しそうに握りこぶしを作るしか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます