第16話 閑話休題

 とある場所。そこはいわゆる空間の狭間のような場所である。

 そんな場所に続くトンネルを、カイドウは一人で歩いていた。

 5分ほどトンネルを進むと、大きな空間に出る。そこには薄いベールがかかっており、ベールに四つの影が映し出されている。

『よく来たな、スクリプト』

「そっちが急に呼び出したんだろう。それで、話とはなんだ?」

『当然、ヘリクゼン・アルファのことだ』

『ここ最近は、アルファの活動が活発になってきている。我々も見えざる力でヒシヒシと感じているのだ』

「そうだな。確かに強くなってきている。拡張機能も使いこなしているのを把握した。バックルとの適合率はかなり高そうだ」

『我の予感では、そう遠くない時に覚醒を迎えるだろう』

『覚醒だけでなく、単純に戦力拡張も考えられる』

『そこでだ、スクリプト。ヘリクゼン・アルファの息の根を完全に止めてくるのだ』

「まぁ、俺は傭兵だ。払うものをちゃんと払ってくれればそれでいい」

『もちろんだ。約束しよう』

「話は終わりか?」

『いや、まだある』

 影の一つがカイドウの事を止める。

『ヘリクゼン・アルファによって破壊された怪人はすでに9体にもなっている。これ以上戦力を減らすことは、我々としても避けなければならないだろう』

『怪人の強みは簡単に数を増やせることだ。しかしヘリクゼン・アルファが登場してからは、生産スピードよりも早く破壊されている始末。このままでは精鋭部隊を出すほかなくなるだろう』

「そうは言っても、俺が知ったことじゃあねぇと思うんだがな」

『もしもの時はお前も積極的に戦いに行ってもらう。そうでなければ、これまで散っていった怪人たちに顔向けできないだろう』

「しかし、怪人というのは量産性がいいのではないのか?」

『それは低級戦闘員の話だ。怪人は上級戦闘員に分類される。上級戦闘員は量産出来るようには作られていない。そして残念ながら、すでに製造コストが跳ね上がっている現状では、1体作るのも非常に難しいだろう』

「アンタらも大変なんだな」

 カイドウは手を首にやりながら、他人事のように言う。

「今度こそ話は終わりか?」

『いや、後一つある』

『レジスタンスとやらが回収したヘリクゼンバックルのことだ』

「それも俺に関係する話か?」

『当然だ。もしレジスタンスが回収したヘリクゼンバックルの修復や改良に成功し、適合者を発見すれば、すぐに戦力にするだろう』

『このバックルには、お前に匹敵する力が秘められている。もし修復に成功した時は、お前の敵が一人増えることになるぞ』

「なるほどな。だが、それこそ精鋭部隊を使うべきなんじゃないか?」

『我々としては、戦力の出し惜しみはするつもりはない。だが、その戦力の一人としてスクリプトに出てきてほしいのだ』

「……理屈は通っている。戦力の出し惜しみをしないなら、味方を総動員して戦いに向かう。当然の結論だろうな」

『その時が来たら、スクリプトにも戦闘に出てもらうぞ』

「了解。ちゃんと貰えるものは貰っているからな」

 そういってカイドウは左足を下げ、体を半分引く。

「こんどこそ話は終わりだな?」

『あぁ。また連絡する』

 その言葉を聞いたイツキは、そのまま大広間を出るのだった。

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