③ パワーバランス
「ねぇ、それって本当にこの子なら三日三晩悩むリクエストじゃない?贅沢で面倒なマイページだねぇほんと」
呆れた
自分の好物すらマイページ頼りの、記憶がふんわりした人間になんたる難問を投げるのか。
〈マイページのご利用ありがとう
ございます。
よろしければレビューにご協力
お願いします〉
その心は。
〈私の印象に通ずる事柄を参考に
するのもよろしいかと〉
そして始まる入力式のアンケート。
10問はあるそれが、視界いっぱいに広がった。
とりあえず使用してみての感想に、何回も助けられている、との選択肢をタッチした瞬間に、胡乱なサンバ隊のアニメーションが始まるのはどうにかならないのか。
「おっ欲しがるね〜、ほんとに
「……抜け目ない、凝り性、じゃっかん、煽り気質?」
名前のヒントになりそうなものはない。
煽り気質は若干どころじゃないよね!
ぴよぴよのひよこを盛られたつた様が、ちぃちゃい手でふわふわしたのと格闘している。かわいい。
かわ……
(……これ、私のつた様かわいい、って感情の結果、マイページから神を侮ったような形で演出に反映されてるってことなら、よくないなぁ)
内心を読み取られるのは感じるが、
その言葉は容易に神への侮りに化け、いずれ神格を貶める事態になってもおかしくはない。
何気なく
〈……すでに自律型に進化しているので、
おりませんー〉
なんとなく、電子音声に不貞腐れたような抑揚がついた。
つまり、
「では、どのような理由からこの対応を?」
〈単に神格としては、おつかいのために
生まれて世に名を知られぬ女神より、
まほろの危機を救って名持ちの貴方の
……まだ付喪神である私の方が
高いだけです〉
みっ!
つた様から潰れたような声が上がった。
頰のあたりを2本の手で抑えて、なにやら震えている。
「……そういうものなんですか?」
「神格の上下は、どれだけ好き勝手できるかどうかも関わるからね。こだわる神はこだわるよ。私だって格下相手の牽制に、その筆を渡したようなものだし」
じゃないと信徒を守りきれない、とのことだ。
ぴんとこない。
「マイページの
「宿主の生涯獲得まほろポイントが5万を超すと、申請してなくても強制的に一番神格の低い神になるよ。付喪神、は本来の
瞑目する
たったの5万で、と口にしてはいけないことはもう学んだ。
家賃にも満たない額、と安易に換算するのはよくない。
「だとしても、マイページの
まあ、朝食前の
あれは信者としても拒絶すべき扱いだ。
「おっとこっちに飛び火したか。でもね、そこの蔦が事あるごとに、君をつるに絡め取ろうとしているのは忘れちゃいないかい。それを止めたのがマイページというのもね。安易に全て捧げたら、きっと瞬く間に神域へと連れ去るよ。まだ、自力でろくにやりくりできない神なのにね」
「えっ」
これはこんなのを神域に連れてって何になるのか、との
ええ?!
そして結構露骨にしてはマイページ経由で怒られていたのに、と驚愕するつた様。
「おや」
こいつこの後に及んで、と
これを放っておくと、気楽な発言のせいで、死後神域での修羅場は避けられない。
神々が気に入った人間の魂を分割して所有、なんてよく聞いた話だ。
神に対して耳目を閉ざされて育った上で、そんな末路は理不尽がすぎるだろう。
どんなにちぃちゃくたって、理不尽を孕んだ女神であると、
「つた神のなさりように、マイページに助けられたことは、本当にないのかい?まだ、人をやらなきゃならんのでは?」
風呂場での一件を思い出して唸る。
重ねて
かびたくあんの余波は確実に妹にも及ぶだろう。
「んぬ……はい……!」
「まあ私も火を司る。たとえ、つた神が煮湯の方から分かれてても楽に勝てるからね、安心なさい。だからマイページも、牽制したいのはわかるが、度の超えたからかいはやめるように。他がマイページの神格の位なんざ知らんのだから、人前で神をからかう
〈はい〉
「つた神、君はもう少し神として育ってからそういうことは考えなさい。この子は神にろくな目に遭っていない、と私をたしなめたのは君でしょうに。ろくな
はい……
三者三様にたしなめられ、ぐうの音も出ない。
人でも神でも、生前に散々修羅場に巻き込まれた
「はい、解決だね。まあ、人目がないなら好きにするといい。でね、
あたしも!行きます!
「はいはい、みんなおいで」
勝気な女神の
本来神同士の独占欲とかで、うまく成立しえない神々のパワーバランスが、奇跡的に噛み合った瞬間であった。
とりあえず、今のところは。
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