第40話 ちょっとしたパーティ

「めちゃくちゃ怒られたね……」

 職員室から出てきた私達四人は、顔を見合わせて苦笑いした。

 魔法世界から帰ったら、お母さんも先生たちも、大騒ぎしていた。私達四人が朝から姿を消し、家にも学校にもいなかったからだ。

 そこへ、お父さんと一緒にひょっこり帰ってきた私達を見て、みんな大混乱した。お母さんたちに事情を話すと、「なんでそんな危ないことをしたんだ!」「どうして学校をサボってまで行ったんだ!」とめちゃくちゃ怒られたのだった。


 それから数日後。今日は私の家に、三人が遊びに来る予定だ。

 もうすぐ来る時間だからと、玄関でみんなを待っていると、リビングからお母さん達の会話が聞こえてきた。

「それで、どうやって魔法を研究したの?」

「実に大変だったよ。まず、用語が整理できていないんだ。電気で例えると、『電気』『電圧』『電流』『電力』をすべてひっくるめて『魔力』と呼んでるような状況だった。それに気がつくまで、僕の研究は全く進まなかった」

 お父さんがなにやら難しいことを言って、お母さんがそれをうっとりした顔で聞いている。

 あーあ。一年ぶりに、これが戻ってきてしまった。

 だけど、前よりは嫌な気分じゃない。この一年間、お母さんの落ち込みぶりを見ていたからね。今さらこれが悪い状態だなんて思えないよ。

 そのとき、ピンポーン、とチャイムが鳴った。私はすぐに玄関を開けた。

 外にいたのはもちろん、秋斗、フウラちゃん、そしてガイア君の三人だ。

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

 私は三人を入れると、リビングの前を小走りで通り過ぎて、二階の私の部屋に向かった。

 今日の私の部屋には、ちゃんとテーブルと座布団を用意しておいた。リビングにあったやつを持って来たんだ。これで、フウラちゃんに負担がかからないよね。

 私はテーブルにお菓子やジュースを並べた。今日は、ちょっとしたパーティだ。

「こんなに用意してくれて、ありがとうございます」

「良いって良いって」

 フウラちゃんが「せめて注ぐくらいは!」と言って、みんなにジュースを注いだ。そして、私達は乾杯をした。

「ねえ、私達って、また魔法世界に行けるかな? 今回はバタバタしてたけど、次はゆっくり色んなところを見てみたい!」

「そうですね。ちょうどもうすぐ、夏休みというものになるようですし」

「あたしも、二人に紹介したい場所がたくさんあるわ!」

 二人とも乗り気だった。やったね。

「なら、この夏休み中に行かないとな。ガイアは九月には魔法世界に帰っちゃうんだろ?」

 そういえばそうだった。三か月もいるのに、そのうち一ヶ月は夏休みなんだ。

「そのことなのですが……」

 ガイア君は恥ずかしそうに言った。

「実は僕、科学世界でも、一ヶ月は五十日くらいあると思っていたんです。それで、魔法世界のカレンダーで、三ヶ月間滞在する気でいたんです」

「ん? ってことは……」

「僕は百五十日間、科学世界のカレンダーで十二月まで滞在します」

 私達は大笑いした。ガイア君が、そんな間違いをしてたなんて!

「使用人の誰も気づかなかったのよ! ……あたしも気づかなかったけど」

 フウラちゃんも恥ずかしそうだ。

「こ、こんな話はやめましょう。今日は、見せてもらいたいものがあるんです」

「ん? なに?」

 私は笑いをこらえなが聞いた。何が見たいんだろう。アルバムとか?

「龍河さんが作っていた、ライフルとかいう武器。あの中に入っていた、あの赤い石を見たいんです。いまどこにありますか?」

「あ、それならここにあるよ」

 私は立ち上がって、勉強机の引き出しを開けた。お父さんが、もういらないからって私にくれたんだ。

「はい。もう電気は抜けてるから、安全だって言ってたよ」

 赤くて綺麗な、透き通った石だ。科学世界には存在しない石だと思うって、お父さんは言っていた。

 ガイア君とフウラちゃんは、まじまじとその石を見つめていた。

 そしてうなずき合うと、私を見た。

「これ……賢者の石ですよ」

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