第39話 作戦の結末
「めちゃくちゃ怒られたね……」
私達はお城の客間で、疲れた顔でソファに座っていた。座ってるというより、ほとんど寝ていた。
村から脱出したあと、私達は合流し、お城に戻った。そして今まさに出発しようとしていた部隊の隊長さんに事情を説明した。
そのあと、ガイア君のお父さん……つまり国王様が出てきて、私達は「なんでそんな危ないことをしたんだ!」とめちゃくちゃ怒られたのだった。
私達は疲れた顔だったけど、笑ってもいた。お父さんを保護できたし、みんなで帰って来れたし、なにより、いま思えばちょっと楽しかった。
「みんな助かってよかったね」
と私は笑った。
「僕は少し、複雑な気持ちです。誰も怪我しませんでしたが、危ない目にあわせたのは確かですし……それに、魔法に法則があるらしいとわかってしまいました」
ガイア君はため息をついた。ここにお父さんがいたら、また上機嫌で法則を語ったのかな。ちなみにお父さんは今、隣の部屋で取り調べを受けている。私達はそれが終わるのを待っているんだ。
「でも海さんが作戦に使った法則は、魔法の法則というより、世界の法則のように見えますね」
とガイア君はあくまで「魔法法則否定派」だった。意外に頑固だなぁ。
「俺も思いつきたかったなぁ、あの作戦!」
秋斗はすっごく悔しがっていた。
「ちょっと考えれば気づくことだったんだよな。フウラの人探しの魔法も、ガイアの瞬間移動の魔法も、異世界には届かなかった。なら、心を書き換える魔法だって、異世界には届かないはずだ。だからクリンを科学世界に連れて行ってしまえば、おじさんの魔法は解ける。ああ、なんで気づかなかったんだ!」
そう、それが私の作戦だった。
瞬間移動でクリンさんをゲートへ運び、科学世界に連れて行く。これだけで、お父さんの魔法は解けたんだ。
ゲートの起動には少し時間がかかるから、ガイア君には先に一度空港へ行って、ゲートをつないでもらった。そして、ゲートが閉じてしまう前に、クリンさんを連れて行ったんだ。
空港に瞬間移動で行くのは法律違反だ。だけど今回は、緊急時だし、王子だし、ってことで「緊急時の超法規的措置」として許してもらえることになった。
「そこまではよかったんだけど……クリンさんには逃げられちゃったんだよね」
「ああ。ちょっとやりすぎた」
と秋斗はリュックからライターを取り出した。それを見て、ガイア君が体を強張らせる。
「し、しまってください、そんな危険なもの!」
「そんなに怯えるなよ。まぁ、危ないのはたしかだけどな」
クリンさんを科学世界に連れ出したあと、秋斗はクリンさんに、ライターの火を見せた。
「科学世界に行った俺達には、魔法が解けたかどうかがわからなかった。だからダメ押しに、クリンに火を見せることにしたんだ。そうすればびっくりして、魔法が解けると思ったから。だけど……」
「恥ずかしながら、僕の方が魔法を解いてしまいました」
びっくりしたのはクリンさんじゃなくて、ガイア君の方だった。クリンさんはその一瞬の隙をついて逃げてしまったんだ。
「姿を見えなくしたのか、瞬間移動したのか……。パニクってるガイアに気を取られてるうちに、いなくなっちまったんだ」
「でも、またすぐに見つけられるよね? マルコーニ村に行けば、あの人達の持ち物がある。それを使えば魔法で探せるでしょ?」
「ええ。あとは、城の者に任せましょう」
よかった。これで事件は解決だろう。
「ところでみんな。俺、すごいことに気付いたんだけどさ」
「なに?」
「あの花火大会って、おとといのことなんだよな」
「うん」
そうだ。色々なことがあって、もうずっと昔のことのように思えるけど、実はたった二日しか経っていない。
「それで、花火大会って土曜の夜にあったよな」
「そうだね」
「つまり、今日って月曜日じゃないか?」
「……」
うん?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます