第37話 作戦会議
「皆さん、一度家の中へ!」
ガイア君は私達を押し戻し、ドアを閉めた。
「どうするの、ガイア君……」
「どうしたものか……」
ガイア君も悩んでいた。
反対に、秋斗はのんきだった。
「ここに立てこもればいいんじゃねえの? 今日の夜には特殊部隊が来るんだろ? 俺たちはそれまで持ちこたえればいいんだ。武器も食料もあるしよ」
そう言って、秋斗はリュックサックから缶詰やライターを出した。そんなもの持ってきてたの……?
「いえ、むしろその方が問題です。このような状況で特殊部隊が来たら、クリンさんは龍河さんや僕達を人質にするでしょう。そして特殊部隊は村全体を鎮圧しかねません。事態はより悪くなっていきます」
村全体を……! たぶん、この事件に関わっているのは、魔法使いの四人だけだ。他の村人達は何も知らず、ただ操られているだけのはず。そんな人達を巻き込むわけにはいかない!
「僕達はなにがなんでも、ここを脱出しなくてはいけません。でも、どうすれば……」
「何かないの? 便利な魔法とか、科学道具とか!」
「あたし達四人が脱出するだけなら、いくらでも方法はあるわ。でも、龍河さんも連れて行くとなると、クリンさんの意識をなくさせるしかない」
「この靴でまたタックルするか?」
秋斗は自分の電動ローラースケートを触った。
「倒れて頭でも打ってくれれば、気絶するかもしれない」
「そんなにうまくいけばいいですが」
倒れるかわからないし、頭を打つかもわからないし、気絶するかもわからない。あまりにも賭けだ。そんな方法には頼れない。
「意識を失わせる魔法とかないの?」
「残念ながら、僕にもフウラにも使えません。意識や心に干渉するのは難しいんですよ。目に見えませんし、触ることもできませんから」
そう都合の良い魔法はないらしい。そうなると他の方法は……。
お父さんが、隣の紙だらけの部屋から何かを持って戻ってきた。
「さすがのぼくも、これは危険だと判断して、村人に見せなかったんだが」
その細長い形は、見覚えがあった。
「お父さん、それってまさか、ライフル!?」
動物を撃ったりするときに使う銃だ!
「形を真似ただけで、火薬は使ってないさ。バネ仕掛けで、中にある石を遠くまで飛ばせるようになっている」
「石をぶつけて気絶させようってこと?」
「早い話がそういうことなんだが、ただの石じゃない」
お父さんは銃をかちゃかちゃといじると、中から小さな赤い石を取り出した。
「村の中で偶然見つけた鉱石なんだが、調べたところ、これはコンデンサーのように大量の電気を溜め込むことができるんだ。ここに電気を溜めて、銃で打ち出せば、当たった相手は電撃で気絶するはずだ」
そう言ってお父さんは、銃をまた組み立てた。
「龍河さん、なぜそんな武器があるのですか? 科学は、人を傷つけてはいけなかったのではないですか?」
「もちろんです、王子。本当は、発電所からニコラが逃げ出したら使おうと思っていたんです。こんな形で使うことになるとは思っていませんでした」
ガイア君は首を振った。
「では、それは最後の手段にしましょう。準備だけしておいてください。僕達は、他の方法を考えます」
「でも他にあるか? 人を確実に気絶させたり、眠らせたりする方法なんて」
秋斗はリュックをガサゴソしている。けど良いものは何も見つからなかったようだ。
「あとは説得かしら」
とフウラちゃんが言った。
「あたし達で説得して、改心させるのよ」
「それこそ自信ないなぁ……」
相手は王子様を襲うような連中だ。私達の声なんて届くとは思えない。
「なら、残るは脅迫ね」
え、フウラちゃん、今なんて?
可愛い顔に似合わず、恐ろしいことを淡々と話した。
「あたしには、こういうときに人を攻撃する許可が与えられているわ。ガイア様の魔法で村人とクリンさんを動けなくして、クリンさんに少しずつ痛みを与えるの。限界を超えれば、魔法を解くはずよ」
ひぃぃ……。でももう、そのくらいしかないの?
「いや、その方法は時間がかかる」
秋斗が冷静に指摘した。
「その間に、フウラの心が書き換えられるだけだ」
だ、だめかぁ。
あれ? ってことは、どんな方法を使うにしても、一瞬で勝負を決めないといけないってこと?
秋斗の指摘で、みんなそのことに気がついた。
思わず、黙り込んでしまう。
心を書き換えるなんて、あまりにも強すぎる。だけどきっと、何か方法が……。
あっ!
「……できるかもしれない。お父さんを連れ出すこと」
みんなの視線が、私に集まった。
私はガイア君を見て、言った。
「だけど、ガイア君が、ちょこっとだけ、法律を破ることになっちゃうけど」
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