第3章 魔法世界

第25話 再びの捜索

 その日の夕方には、ガイア君から話があった。ガイア君はお城に使いの人を出して、事の次第を報告したんだ。そして、お城の魔法使いさんが、お父さんを探した。

 その結果が、返ってきた。

 私の部屋に四人が集まると、ガイア君は真面目な顔で話した。

「龍河さんは、生きています」

 私は笑顔になった。

「ほんとに!?」

「はい。いまいる場所は、シュバルツ王国の西の果てにある小さな村、マルコーニ村です。水晶で見たときは、狭い部屋で一人、何かをしていたと」

 やった、やった!

「じゃああとは、連れて帰るだけだね!」

 しかしガイア君は渋い顔だ。

「マルコーニ村といえば、魔法使いがほとんどいないことで知られる村です。はっきり言って、その……被差別村なんです」

 ヒサベツ? 差別されてるってこと?

「まぁそうなるだろうな。魔法を使える人と使えない人がいて、使えた方が生活が便利になるし、仕事もたくさんあるだろう。なら、魔法を使えない人は、そうでない人から差別されるに違いない」

 秋斗には予想できていたらしい。

「恥ずかしながら、その通りです。ですがマルコーニ村は、一年ほど前から生活が豊かになっているんです。たまたま腕の良い魔法使いが生まれたのだと思っていましたが……」

「お父さんが、その村に住み始めたから?」

「おそらく」

 お父さんは、そんなところでいったい何をしているんだろう?

「そうすると、お父さんを連れて帰ると、その村の人達が可哀想か……」

「海さんは優しいですね」

 突然褒められた。

「え、そう?」

「ですが問題はそこではありません。龍河さんにはいま、容疑がかけられています」

「容疑? なんの?」

「もちろん、襲撃のです。昨日の襲撃は、龍河さんの指示だった可能性もあるんです」

 え……ええっ!?

「お父さんはそんなことしないよ!」

「もちろん、そう信じたいですが……」

 ガイア君とフウラちゃんは、目を合わせた。二人とも眉をひそめて、困っている。

「あなたのお父さんは、あなたに魔法を使わせようと、色々『実験』してたのよ。何かの実験のために、賢者の石を手に入れようとしても、不思議じゃない」

 そう言われると、否定できない。でも、いくらあのお父さんでも、人に危害を加えるようなことはしないはずだ。

「どちらにせよ、襲撃者が龍河さんを知っていた以上、僕達は龍河さんを捕まえないわけにはいかなくなりました。いまごろ城の特殊部隊が、マルコーニ村へ向かう準備をしているはずです」

 準備……。それが終わったら、その村に部隊が行って、お父さんが捕まっちゃう?

「その準備って、どのくらいで終わる?」

「え? さぁ……法的な手続きもありますから、丸一日かかるかと」

「なら、その前にお父さんに会って、真相を確かめられないかな?」

「会うって、海さんがですか?」

 私は力強くうなずいた。

「いけません、危険です。襲撃者たちは、おそらくマルコーニ村の人間です。そんなところに行ったら、どうなるか」

「そうだけど、でも」

 危ないってのはわかる。それでも私は真相を確かめたい。

「意外と平気じゃないか?」

 秋斗が助け舟を出してくれた。

「仮におじさんが黒幕だったとしたら、海はその娘だ。簡単には手を出さないだろう」

「でも、昨日は海が襲われたじゃない」

「海の顔を知らなかったんだろ。だから村に着いたら、羽村龍河の娘だって言えば、安全におじさんに会えるはずだ」

「黒幕じゃなかったら?」

「その場合でも、おじさんはマルコーニ村で重要人物になっているはずだ。生活を豊かにした人だからな。そんな人の娘なら、歓迎されるはずだ」

 秋斗の説得に、ガイア君はしばらく悩んでいた。

「それに、海には俺達が付いてる。俺達三人いれば、海を守れるだろ」

 守ると言われて、ドキッとしてしまった。それってなんだか……ヒロインみたいじゃない!?

「フウラは攻撃魔法が使えるし、ガイアは遠くから魔法を撃てる。俺も科学道具をいくつか持って行こう。そして海は……足も遅いし頭もそんなに良くないけど」

「なにそれ!?」

「でも、おじさんを説得して連れ戻すことくらいはできるだろう。特殊部隊が乗り込むより、平和的に解決できるかもしれないぜ?」

 ガイア君はそれでもしばらく悩んでいたけど、最終的に、うなずいた。

「わかりました。明日、行ってみましょう」

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