第22話 賢者の石
賢者の石が……!?
「それ! 私もそれが聞きたかったの! 賢者の石って何? あの人たちはそれを使って、何をしようとしているの?」
「賢者の石は、強大な魔力を秘めた石だそうです。人の背丈ほどもある、巨大な赤い石だとか」
え、そんな大きいの。手のひらサイズだと思ってた。
「それは、石というより、岩だね」
「そうかもしれません。とにかく、賢者の石に触れている間は誰でも、どんな魔法でも使えるらしいんです」
誰でも、どんな魔法でも?
「それって、私でも!?」
「はい。おそらく、科学世界の人間であっても、魔法が使えるようになるはずです」
え、なにそれ、すっごく欲しい!
あの人たちが欲しがった理由が、一瞬で理解できた。
私も、魔法を使いたい!
私は目を輝かせたけど、秋斗は眉をひそめた。
「さっきから『らしい』とか『はず』とかばっかだな。正確なところは知らないのか?」
「はい。実は僕も、祖父から話を聞いただけで、実物を見たことはないんです。それに祖父が言うには、賢者の石は曽祖父によって粉々にされ、封印された、と」
「ええっ!?」
「賢者の石は、ギルバート家に代々受け継がれていたそうですが、曽祖父がその伝統を破壊したのです」
なんてもったいない! それじゃ賢者の石は、もうないってこと?
私が嘆いている間に、秋斗は何かを指折り数えていた。
「曽祖父って、ひいじいちゃんのことだよな。ガイアのひいじいちゃんって、もしかしてあの人か?」
「はい、そうです。僕の曽祖父、アルスギア・ギルバートは、魔法世界と科学世界をつないだ人物です」
アルスギア・ギルバート! 教科書で、名前は見たことがある!
「祖父が言うには、曽祖父が二つの世界を繋いだのは、賢者の石を封印するためらしいのです。賢者の石は強大な魔力を秘めるため、その実在を知った者達からたびたび狙われたそうです」
つまり、今日みたいな人がたくさんいたってことだ。
「曽祖父はそれを嫌い、賢者の石を決して奪われない隠し場所を探したそうです」
「それが、科学世界だったと?」
「はい。曽祖父は異世界の存在を信じており、『魔法使いのいない世界もあるはずだ』と考えたとか。それを賢者の石に探させて、見つけたのが、この世界だったというわけです」
「賢者の石の封印場所を、賢者の石で探したのか」
「そうなりますね。探すのもそうですし、二つの世界をつなげるなんて、賢者の石でもなければ不可能でしょう」
そんなすごいものを封印しちゃうなんてもったいないけど、争いの原因になってたのなら仕方ないのかな。
「それで、賢者の石はどこに封印されているの?」
「わかりません」
「え」
「ですが、封印の解除方法はわかっています。魔法世界の人間が科学を良いものだと思うこと。もしくは、科学世界の人間が魔法を良いものだと思うこと。それが、封印解除の方法です。これを達成すると、賢者の石が現れるそうです」
予想外の方法だ。呪文で扉を開けるとかじゃないんだ。
「変だな。それならもう、封印は解けてるはずだ。ここに、魔法を良いものだと思ってる科学世界の人間がいるじゃないか」
秋斗が私を見た。ガイア君とフウラちゃんも私を見る。
そうだ、私はこの世界で誰よりも魔法の便利さを知ってるし、魔法使いになりたいと思っている。なのに賢者の石が現れないのはおかしい。
「たしかにそうですね。もしかしたら、僕の知らない条件があるのかもしれません」
「ハーフだからかしら?」
「そんなぁ」
まさかハーフのせいで、そんな損をするなんて。
「あるいは、全くのでたらめなのかもな。賢者の石は、ガイアも見たことないんだろ?」
「はい。ですが、僕はその存在を信じています。祖父は、嘘も冗談も、一切言わない人でしたので。もし賢者の石がないのなら、祖父がそんな話、するはずがないんです」
それに、信じているのはガイア君だけじゃない。
どういうわけか、お父さんも信じているのだ。
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