第19話 秋斗の提案
花火大会からの帰り道、私たちは前後を護衛の人たちに守られながら歩いた。
「結局、あいつらは何者だったんだ?」
秋斗の質問に、ガイア君は首を振った。
「わかりません。見た目はシュバルツ人でしたが……」
二人が話している間、私は恐怖で頭が回っていなかった。手と足がまだ震えている。
フウラちゃんが私を気遣って、肩を貸してくれた。
「ごめんなさい、あたし達のせいで、こんな事件に巻き込んでしまって」
「べ、別に平気だよ」
まだ声も震えていた。
フウラちゃんが心配そうに、何度も背中をさすってくれる。その手の温かさを感じるうちに……だんだんと、気持ちが落ち着いてきた。
そして私の中で、恐怖心が別のものへと変わっていった。
恐怖から、闘志へ。
あの人たちは、きっとまた襲ってくる。賢者の石とやらを狙って。
そのときこそとっ捕まえて……お父さんのことを、聞き出さなきゃ!
「ところで、不思議なんだが」
秋斗が声を小さくして、私たちだけに聞こえるように言った。
「どうしてあいつらは、このタイミングでガイアを襲ったんだ?」
「どういう意味ですか?」
「だって、今日は人混みに来るからって、護衛を増やしてたんだろう? おまけに、結界も張っていた。襲うのには向かないタイミングだったはずだ」
ガイア君は腕組みをして考えた。
「たしかに秋斗君の言う通りですね。しかし、結界は今日に限らず、前からずっと張っています。今日は、花火でそれがたまたま破れたから……」
言いかけて、ガイア君はハッと気がついた。
「つまり、ずっと前から尾けられていた? 結界が破れるチャンスを、今か今かとずっと待っていたと……?」
「ああ。もしくは、護衛の中に犯人の仲間がいるか、だ」
私たちは黙り込んだ。前後の護衛の人たちが、不審そうに私たちを見た気がした。
「いえ、護衛に犯人がいる可能性は低いでしょう。もしそうなら、秋斗君が言った通り、もっと護衛の人数が少ないタイミングで襲えばいい」
「と言うことは、尾けられていたってことになる」
ゾッとした。私たちは思わず、周囲を見渡した。でも、不審な金髪の人は見当たらない。
「さすがに、今は尾けていないでしょう。僕たちから反撃を受けた直後ですし、賢者の石の情報はつかめたんですから。一度仲間のところへ戻っているのではないでしょうか」
「ですがガイア様、このままホテルに戻るのは危険です。待ち伏せされているかもしれません」
「そうだね。泊まる場所を変更しよう。とはいえ、今から新しいホテルを探すとなると……」
もう夜だし、今から空いてる部屋を探すのは大変かもしれない。
「海の家でいいんじゃねえの?」
と秋斗が提案した。
「このあたりのホテルなんて、数軒しかないだろ? だったら、全部のホテルに待ち伏せされてるかもしれねえ。それに、どのホテルも魔法使いは毛嫌いされてるだろ。なら、海の家が一番だ」
「そうですね……もし、ご迷惑でなければ。謝礼は致します」
「え、えっと、それはお母さんに聞かないとわからないけど……」
「よし、決まりだな。早く海の家に行って、おばさんに頼んでみようぜ」
え、ちょっと待って。なんか勝手に話が進んでるけど。
が、ガイア君が、私の家に泊まるーー!?
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