第2章 魔法と科学
第11話 海の悩み事
ガイア君たちが帰ったあと、私は自分の部屋でぼんやりしていた。
頭に浮かぶのは、お父さんのこと。
まさか、お父さんが、し……死んでいるなんて。
ビリビリに破けたTシャツは、丸めてベッドの下に隠した。お母さんに見つかるわけにはいかない。このTシャツが見つかったら、破けたわけを話さなきゃいけないし、そしたらお父さんのことも話さないといけない。
そんなこと、とても私にはできない。
だけど、いつまでも隠しておくわけにもいかない。
お母さんだって、本当はお父さんのこと、知りたいはずだよね。だったら私は、それを調べるべきなんじゃないか。
もし、本当にお父さんが死んでいるとして、その理由はなに?
どこかで交通事故にあった? でもそれなら、警察が調べたときにわかるはずだよね。
何かの実験中の事故? そうだとしたら、研究室とか大学とかから、うちに連絡があるはずだ。
そうなると、事故の線はない。お父さんは、自分で死んだか、何かの事件に巻き込まれたんだ。
でも、いつ、どこで? どうして? 私には全く心当たりがないし、なんの手がかりもない。
これも、魔法で調べられたりしないかな。
次の日も、そのまた次の日も、ガイア君は人気者だった。「王子様」としての物珍しさはとっくになくなっていたけど、ガイア君自身の人の良さで、女子からも男子からもよく話しかけられていた。
フウラちゃんも、最初はみんな「ガイア君のおまけ」みたいに見ていたけど、だんだん人気が出てきた。みんなが困っていることによく気がついて手助けしてくれるし、給食を配るのも早い。お掃除もうまくて、フウラちゃんがお掃除したところだけピカピカになっていた。
「どうして生徒が自分で掃除しなきゃいけないの? 掃除はメイドがやるものよ!」
そう言って全ての場所を一人で掃除しようとまでしたけど、
「フウラ、よその国に来たときは、その国の文化に従うべきだよ」
とガイア君に叱られていた。
あと意外なことに、二人は勉強があまり得意じゃなかった。王子様なんだからすっごく頭が良いのかと思ってたけど、そうでもないみたい。
「僕たちの国で習う内容とは、全然違いますからね」
と、ガイア君はクラスの女の子達に恥ずかしそうに言っていた。
「算数はかろうじて理解できますが、理科や社会は何を言っているのか全然わかりません」
「あ、それ私もわかんない」
「一緒だねー」
とみんなが言って、ガイア君と一緒に笑っていた。
……と、まぁ、そんな感じで、私は数日間ガイア君を見ていたけど、話しかける隙は全然なかった。まるで好きな人になかなか話しかけられない恋する乙女のようだけど、違う。ほら、私ってクラスでちょっと浮いてるから、周りに常に誰かがいるガイア君には、なかなか話しかけにくいんだ……。ガイア君だって、今更話しかけられても迷惑だよね。ガイア君が話したかったのは私のお父さんであって、私じゃなかったんだし……。
「最近ずっとガイアのこと見てねえか?」
ある日の給食の時間のこと。私がぼんやりとガイア君を見ていると、隣の席の秋斗が、なんだかムスッとした声で聞いてきた。
「見てるっていうか、話しかけたいなって思ってるんだけど……」
「なんで?」
「なんでって、そりゃ、お父さんのこと調べてもらいたいし」
そう言うと、納得したのか同情したのか、秋斗の口調が優しくなった。
「そうか。やっぱ気にしてたんだな。学校じゃ今まで通りだったから、全然気にしてないのかと思ってた」
「そんなわけないでしょ」
「だよな。よし、なら海のために、俺がガイアに声かけてくるよ。四人で遊ぶ予定でも立てて、そこでおじさんのことを相談しよう!」
「え、本当に? ありがとう!」
それなら助かる! 秋斗はクラスで浮いていない。私と一緒にいる時間が長いけど、普通にクラスの男の子達と仲が良い。ガイア君にも自然と話しかけられるだろう。秋斗はいつも意地悪なことばかり言うけど、時々こうやって、私に協力してくれるんだ。いつも協力してくれれば良いのに。
「じゃあ、お願い」
「おう、任せとけ」
と秋斗は笑った。
だけど、そのあとすぐに、ガイア君の方から話しかけてくる事件が起こった。
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