第4話 私の家が、世界を救う?
私が生まれるより何十年も昔。ある日突然、私たちの住むこの世界と、魔法の世界をつなぐゲートが現れた。そして、二つの世界間で、戦争が始まってしまった。
その戦争はすぐに終わった。私たちの世界が大きな戦争をした直後で疲れていたし、魔法の世界も争う気はなかったからだ。
それでも、私たちの世界の人たちに、「魔法は戦争に使える危険なものだ」という常識を植え付けるには十分だった。それに、こっちの世界の人は、どんなに頑張っても、誰一人として魔法が使えるようにならなかった。だからみんな、魔法をどんどん遠ざけるようになった。
……と、歴史の教科書には書いてある。たぶん、本当のことなんだろう。ちなみに、向こうの世界のことは「魔法世界」、こっちの世界のことは「科学世界」と呼ぶ。
そんなわけで、私がクラスで浮いているのは、こういう歴史的事情があるのだ。
あるのだけど、それにもかかわらず、ガイア君は放課後になっても人気者だった。私と同じ事情どころか、完全無欠に純血な魔法世界の人のはずなのに。
女子に囲まれるガイア君を横目に、私はランドセルに教科書やノートを詰め込んだ。トイレから戻ってきた秋斗が、ランドセル片手に言う。
「海、帰ろうぜ」
「うん」
ガイア君のことは気にしたってしょうがない。帰って漫画でも読もう。
秋斗と並んで教室を出ようとしたとき、後ろから声をかけられた。
「ちょっとすみません。
この安心感のある透き通った声は。
振り返ると、ガイア君とフウラちゃんが目の前にいた。その奥には、私たちを遠巻きに見つめるクラスメイト達。
「そうだけど……」
「よかった。実は僕、あなたに会えるのを楽しみにしていたんです」
「ふえっ?」
わ、私に? なんで? なんで魔法世界の王子様が、私のことを知っているの??
「もしよければ、今日このあと羽村さんのお家に伺いたいのですが、ご都合はどうですか?」
「わわわわ私の家にっ!?」
秋斗が動揺する私を変な目で見た。クラスメイト達からの視線も痛い。
それを察してくれたのか、ガイア君は優しい声で言った。
「歩きながら話しませんか?」
校門を出ると、ガイア君はまず謝った。
「さっきは突然声をかけてすみませんでした」
「い、いえいえ」
「本当に羽村さんとお話ししたいと思っていたのですが、あなたが帰ろうとしてい他ので慌ててしまって」
「で、なんで海に会いたかったんだ?」
秋斗が割って入ってきた。秋斗は例のローラースケートは起動せず、私たちと並んで歩いていた。
「少し複雑な話になってしまいますが、いいですか?」
「いいぜ。どうせ家までは、しばらく歩くし」
「わかりました。では」
するとガイア君は、とんでもないことを言った。
「僕は、羽村さんのご家庭が、世界を変える鍵になると思っているんです」
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