守護神はキックがお好き

嵯峨野玲子が倒れたにゅうめんマンを攻撃しようとしたので、にゅうめんマンは両足で宙を蹴り上げるようにしてとっさに身を守り、すばやく跳ね起きた。


相手の出方をうかがって少しにらみ合ってから、嵯峨野玲子が相手のすねに、すばやいキックを入れた。それでにゅうめんマンが一瞬ひるんだので、嵯峨野玲子は即座に、自分より背の高い敵の頭を狙って強烈な回し蹴りを放った。にゅうめんマンは腕を出してこれを防いだが、破壊力のある打撃を受けて腕がしびれた。頭にくらっていたらと思うと恐ろしい。


嵯峨野玲子は再びすねを狙ってキックをしたが、にゅうめんマンは同じ攻撃がまた飛んで来ることを予見していたので、今度は後ろにかわした。


次いで嵯峨野玲子は間を置かずにハイキックを放ち、これもかわされると、次の瞬間には、相手のあごのあたりを目がけて飛び膝蹴りを打ち込んだ。だが、にゅうめんマンはそれを上手に受け流し、ダメージはほとんどなかった。


キックばかりではダメだと思ったのか嵯峨野玲子は2度目の体当たりをしかけた。横によけるとまずいことをにゅうめんマンは学習していたので、相手が体当たりをする気配を見せると高く跳び上がり、敵の頭を跳び越して攻撃をかわした。


「よけてばっかりじゃない。そんなことでは私に勝てないよ」

「……」


最初の霊撃と体当たりですでに大きなダメージを受けていたにゅうめんマンは、下手なことをしてそれ以上攻撃を受けたくなかったし、体力を消耗する派手な動きもあまりしたくなかった。少ない動きで早く勝負をつけるチャンスを、にゅうめんマンはうかがっていた。


2人は再びにらみ合った。そして、先に攻撃をしかけたのは、やはり嵯峨野玲子だった。頭を狙った鋭いハイキックだ。


《今だ!》

 にゅうめんマンは神経をとぎ澄まして敵の動きを見切り、攻撃をうまく受け止め、キックの後にできるすきをついて足払いをかけた。嵯峨野玲子は突然の反撃をよけられず尻もちをついた。


にゅうめんマンは転倒した敵にすかさず近づき、相手の首にすばやく腕をかけて背後からめつけた。この技、スリーパーホールドから脱出するのは難しい。形勢は一気に逆転した。


「降参しろ嵯峨野玲子!ここでお前を窒息させることも首をへし折ることもできるが、負けを認めれば命まではうばわない」

 電車の守護神の命がどうなっているのか知らないが、とにかく、にゅうめんマンはそう言っておどした。


ところが嵯峨野玲子も肝が据わっているようで、脅しには屈せず、背後から首を絞めつけるにゅうめんマンの脇腹をぼかぼか殴って抵抗した。地味な見た目に反してそのパンチがいちいちすごく痛いのだが、にゅうめんマンも、ここで勝負をつけるんだという強い意志でやせ我慢して、技をかけ続けた。

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