2章 地下鉄の怪人

新たなる怪人

「天狗の件であなたの強さはよく分かりました。ですが油断しないでください。この怪人は女ではありますが相当腕が立つようです。気を抜いたら無事では済まないかもしれません」

 重役がにゅうめんマンに言った。

「そうなんですか」

「ええ。特に注目すべき情報として、怪人は京都メトロの守護神、嵯峨野玲子さがのれいこに似ているという証言があります」

 京都メトロは京都市にある地下鉄だ。30駅強からなる2路線を運営している。


「嵯峨野玲子?」

 にゅうめんマンには聞き覚えのない名前だった。

「あなたは京都の方ではないし、鉄道関係者でもないからご存じないかもしれませんが、京都メトロの嵯峨野さがの姉妹といえばこの業界ではとても有名です。2人姉妹で、玲子はお姉さんの方です。妹は嵯峨野まいといいます」

「なるほど」

「武闘派の守護神で、強大な霊力を持っているそうです。1人ずつでもすごく強いですが、2人そろうと無類の強さを発揮し、あまりに強いので『メトロの死神』という愛称(?)で呼ばれたりもします」

「守護神らしからぬ呼び名ですね」

「それだけ強いということでしょう。私も直接会ったことはありませんが」


「それで、仮にその怪人が嵯峨野玲子だったとして、京都メトロの守護神がなんで万休電鉄の営業を妨害するんでしょうか」

 にゅうめんマンが疑問を口にした。

「私どももそれが分からないんです。今までこんなことはありませんでしたし」

「天狗と同じく、霊山電鉄に雇われたとか」

「それも考えられますけど何かしっくりきませんよね。京都メトロの守護者が、霊山電鉄のために万休電鉄を攻撃するというのは不自然です」

「確かに」

「嵯峨野玲子に似ているだけで別人なのかもしれません」

「そうですね」


「相手の事情がどうであれ、うちとしては怪人を追い払うことができれば問題ありません。――危険な相手かもしれませんが、やっていただけますか」

 重役はにゅうめんマンの目を見つめた。

「はい。僕は正義の味方ですから、どんなに危ない相手でも、それが美――市民の平和を乱す存在であれば放っておくわけにはいきません」

「頼もしいですね。それではくれぐれも用心して、怪人退治をお願いします」

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