おまけ4 わがまま【天音side】
「本当は神崎さんのことが……好きです」
言わせてしまった。
あたしのためを思って告白してくれたのだろう。
あたしが泣いたりなんかしたせいで。
「大丈夫、嘘つかなくていいよ。泣いたりしちゃってごめんね」
「そんなことない。全部悪いのは俺だから。俺があんなこと言ったせいで君を苦しめて、それなのに今更虫がいい話だと思う。でも、本当に――」
「違う!!」
確かに君に拒絶されてすごく落ち込んだ。
でも、それは君に冷遇してきた報いだと思った。
これからずっと君に嫌われながら生きていく運命があたしへの罰だと理解した。
だから……
「君は優しいから、あたしのために気を遣ってるだけでしょ。本当に大丈夫だから放っていっていいから」
あたしのことを妥協で選ばないでほしい。
好きな人がいるならそっちを優先してほしい。
泣いちゃだめだってわかってるのに、涙が溢れてくる。
頑張って我慢しないと……しないといけないのに……っ!?
彼があたしの手を優しく包み込むように握り、顔から両手を離れさせる。
彼はあたしのことを見ているが、あたしは君に合わせる顔がなく逸してしまう。
「聞いてほしい……俺は君に最低なことを言った。君と釣り合っていないって、一緒にいても楽しませられないって、幸せにできないって思ってた。でも、そんなことを考えるのは今日で終わりにする。今は信じられないかもしれないけど、ちゃんと伝えられるように努力するから。だから俺に、君に好かれるように頑張るチャンスをください」
なんでそんなことを言うの?
そんなこと言われたら、あたしは君に甘えちゃう……
「こんなめんどくさい女でいいの?」
「めんどくさいなんて思ったことないよ」
「ギャルだけど?」
「ギャル好きだって本屋で言ったでしょ」
「嫉妬でいじめられるかもしれないよ?」
「外野はどうでもいいよ。健とか、智也とか、小林とか心強い友達もいるし、何とかなるよ」
「わがままも多いし」
「むしろ、俺ができることだったらなんでも頼ってほしい」
「……本当にあたしでいいの?」
「俺は神崎天音が好きだよ。これからは自分に正直になる。見ていてほしい。神崎さんは?」
ああ、最低だな。
君が否定しないって分かってるはずなのに、あたしは君に質問してしまっている。
でも、君があたしをまっすぐに見てくれるからあたしも君に応えたいと思ってしまう。
君があたしのことを好きになってくれるように頑張りたいと……
「あたしも、斎藤君が好き……大好き」
「俺も大好きだよ」
「……ごめんね」
「それはこっちのセリフだって。神崎さんが謝ることじゃない」
違うよ。
君には言えないけど、あたしのわがままに君は巻き込まれているんだよ。
それなのに、君はどうしてそんなふうに笑ってくれるの?
どうして……っ!?
あたしは急いで顔を隠した。
涙を拭った時に黒い跡が手に残ったから。
「あんまり顔見ないでほしい。メイク崩れてひどい顔しているだろうから」
「全然気にならないよ」
「あたしが気にするの!! ブッサイクな顔を好きピには見せられない」
やばい、メイクが崩れた状態を見せてしまうなんて幻滅されたかも……いや、君はそんな人じゃない。
だって君は優しい人だから。
ぐぅうう!!
お腹の音が激しく鳴る。
恥ずかしい。この場からいなくなりたい……
「ごめん」
「ごめん」
あれ? 声が重なった?
顔から手を離すと、君と目が合う。
何が起こったのかを理解したのか、その偶然がおかしくて二人合わせて噴き出す。
それがあまりに可笑しくて、つい大きな声で笑ってしまうと、君も周りの目なんか気にせずに笑う。
「ファミレス寄って帰らない?」
「いいよ。あたしもメイク直したいし」
「時間は大丈夫?」
「平気平気、ほら行こっ♪」
あたしは君に手を差し伸べていた。
君に好きだと言われて舞い上がっていたのだろう。
君はあたしの手を握り、あたしの横に立ってくれた。
あぁ、好き。大好き。ずっと君の手を握っていたい。ずっと君と一緒にいたい。
だから、君に愛されるように頑張るよ。
君のためなら、なんでもするから。
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