おまけ2 文化祭を終えて【天音side】
「マジで緊張した〜〜」
「まさか、斎藤君のお母さんがあそこまで若々しいとは」
「あれで四十超えてるって、斎藤ママ美魔女過ぎでしょ」
文化祭が終わり、今日あった出来事を振り返りながら、玲花とナギちゃんの三人で通話中。
エマちゃんも誘ったのだが、用事があると断られてしまった。
「ヤバい女とはどうなったの?」
「何もないよ。大人しく引いてった」
「天音の美貌に恐れ慄いたってことね」
「……それは違うんじゃないかな」
照れ隠しではない。
あたしの勘だと、桐谷さんは最初から斎藤君を目当てにしていなかった。
それは明希さんも気づいていたはずだ。
それに勘づいた上で、誰にも言わないと前置きしてからあたしに聞いてきたんだ。
『神崎さんは悠誠のこと好きじゃないの?』
多分、明希さんはあたしの気持ちにも気づいていたはずだ。
そこをあえて尋ねてきたのだろう。
「好きって言っちゃえば良かったのに」
「そうは思わないかな」
「思わないって天音さ〜、前から思ってたけど、どうしてそんなに斎藤から言わせたいの?」
「あたしから言っちゃうと断れないでしょ?」
私の人気のせいで、断ることは難しいだろう。
断れば、男女関係なく斎藤君が攻撃対象になってしまう可能性だってある。
だが、それ以外にも理由はある。
斎藤君にあたしと付き合いたいと思ってもらえるくらい好きになってほしい。
欲張りかもしれないけど、愛されたいって思ってしまうんだ。
それに、あたしから言ったら意味ないし……
「あーしなら喜んで付き合っちゃうけどなぁ」
「あたしと?」
「もっちろん。男子全員そうだって」
「私が男だったら、天音はウェルカム」
「あーしは?」
「ない」
「おい」
「絶対にない」
「絶対にとか付けんな!あーしだって傷つく乙女なんだよ!」
「天音の五人斬り凄かった」
「無視するな!……と言いたいところだけど、あれは面白かったね。まあ、斎藤が出てこなかったのは残念だったけど」
「うん、先に帰っちゃったらしいからね」
「すごいチャンスだったのに、もったいないよね〜」
「いや、斎藤君があたしのこと好きとは限らな――」
「くはない!!」
ナギちゃんは私の言葉に被せてくる。
また、あたしがやらかしてしまったようで、少しキレ気味である。
「なんでアンタよりあーしの方が分かってんの?」
「私でも分かる。斎藤君、天音のこと好きだよ。文化祭デートの誘いに乗ってくれる時点で明白」
「玲花もってことは……あたし相当鈍感ってことだよね?」
「全くその通りね。鈍感意気地なしツンツン女が分かるってことは相当よ」
「ナギごめんね。ナギのことも好きだよ」
「あーしがそんな適当な謝罪に騙されると思ってんの?まあ、今度の休日、練習台になってくれるならいいけど」
「じゃあ、私に似合うの教えてね」
「はいはい。エマも誘って四人で玲花の家に集合とかでどう?」
「ママ来るかもだけどいい?」
「全然いいよ。むしろ、玲花ママに意見もらえるの嬉しい」
玲花の母親は美容師ではあるが、プロとしての意見をもらえることにナギちゃんにとって嬉しい機会なのだろう。
なんか流れであたしも行くことになってるけど、一応聞いておこうかな。
「当然のようにあたし入ってるけど」
「え、何?来ないの?」
「えっ……行く」
「はあ、めんどくさ。アンタ達、揃いも揃ってめんどくさいわ」
呆れてため息をしているが、どこか嬉しそうだ。
玲花の家で四人でネイルか……
「あのさ、由依ちゃん誘っていい?」
「室長?あーしは全然いいけど、全員できるかは分からん」
「リビング貸してもらうつもりだから大丈夫だと思うよ」
「じゃあ、連絡してみるね」
もふもふしてそうな可愛らしい熊の人形のアイコンを押して、来週の休日の予定を聞く。
「……いつの間にか、仲良くなってるよね」
「うん、今日も助けてもらったし」
「ヤバい女のこと教えてくれたの石上さんなんでしょ」
「うん、本当に助かった」
「電話誘ってみる?室長、面白いし」
「誘いたいけど、《ライム》に二十一時以降携帯見ませんって書いてあるから無理かな」
「まあ、ダメ元で一回誘ってみてよ」
ナギちゃんに促され、電話できるか尋ねる。
由依ちゃんとの関係はあたしの誤解から生じたものだが、何かお礼をしたいなと思うほどに今では助けてもらっている。
休日に会えたら、そのタイミングで何か上げれたらなと思っているが、由依ちゃんからの申し出で隠していることもあるので、できれば学校以外の場所で会いたい。
「はぁ~、来週楽しみ〜〜」
「いつも通り、材料費は折半で」
「はーい」
「えっ、ナギの奢りじゃないの?」
「図々しいにも程があるだろ」
まだまだ夜は更けていく。
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