第6話 神様の嘘つき!
終わり? これで終わりなの?
ダニエルおじさんに会えないまま、おばあちゃんは埋められてしまった。
神様の奇跡はどこにあるの? 二十四年も祈らせた挙句に、嘘をついておばあちゃんを騙すような神様に、おばあちゃんは連れてかれちゃったの?
「おばあちゃん、ダニエルおじさん帰ってこなかったよ。
おばあちゃんあんなに一生懸命お祈りしたのに。
あたしだってママだってお祈りしたのに、まだ足りないっていうの神様。
神様は、おばあちゃんの願いなんて、初めから叶える気なかったのよ。
嘘つきの詐欺師野郎なんだ。
違うって言うなら神様で出てこい!おばあちゃんに謝れ、
あたしに一発殴らせろ! うわーあぁん」
おじさんが帰ってくるまでって、ずっとずっと泣くのを我慢してた。
でも、もう涙が止まらない。体中の血が全部涙になって出ていっても構わない。
あたしなんてこのまま死んじゃえばいい。
おばあちゃん、おばあちゃん、約束したのに。
おばあちゃんの願いを叶られないなら、あたしなんて生きてる価値ない!
――では手伝っておくれ、私が死者の願いを叶えるのを。
ただし日没までだ――
「え?」
びっくりして顔を上げたら、右端のお墓のところにおじいちゃん牧師様が立っていた。
若牧師様の前の牧師様で、若牧師様が、まだ日曜学校の先生をしていた時から、おじいちゃん牧師様、若牧師様と、あたし達子供はそう読んで区別していた。
「今の声おじいちゃん牧師様なの。何か……違くない?」
あたしが聞くと、おじいちゃん牧師様は人差し指を唇に当てて、笑って手招きしながら礼拝堂のほうに歩き出した。
おじいちゃん牧師様は、いつも子供にとっても優しい。
だからあたしはついていった。
おじいちゃん牧師様が開いたドアから礼拝堂に入ったので、あたしも続いて入った。
礼拝堂では、若牧師様が跪いてお祈りをしていた。
いつものように、両手に白い手袋をして、詰襟の服をきちんと上まで留めている。
おじいちゃん牧師様は、いつのまにか若牧師様の隣に立っていた。
「アナじゃないか、僕に何か用かな?」
そう言って立ち上がった若牧師様の影が、ステンドグラス越しの日差しに、くっきりとした影を落とした。
「え? あたし、あの……」
ギョッとした。
だって一緒に立ってるおじいちゃん牧師様には影がなかったんだもの。
途端にあたしは思い出した。おじいちゃん牧師様の名前はトニー・グレゴリウス、去年九十歳で老衰で死んじゃってたんだ!
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