第5話 埋葬

「待って、お願い待って、ダニエルおじさんがまだ来てないの。一目でいいからおばあちゃんの顔見せてあげて、おばあちゃんと会わせてあげて!」


 あたしは必死に叫んだけど、大人達は止めてくれない。

棺は穴に降ろされ、スコップで土がかけられていく。


 あたしは、何度も何度も、家の方を振り返る。

今にもダニエルおじさんが走ってくるんじゃないかと信じて。

でもおじさんは来ない。


 どうして? 神様はおばあちゃんの願いを聞いてくれたはずだよ。

どうしておじさんは来ないの? 

 おじさんがいなかったら、あたし、おばあちゃんとの約束を守れない。ダニエルおじさんとおじいちゃんを仲直りさせられないよ。


 ついに最後の土がかけられた。木に名前が書かれた、仮の墓標が建てられる。後で墓石を置く時の目印だ。


「アーメン」の声が響き渡る。


 あたしは花だらけの黒い盛り土の前で、しゃがみこんだまま動けなかった。


 その下には、とうとうダニエルおじさんに会えなかったおばあちゃんの体が埋まっている。

 魂は神様がもう連れて行ってしまったのだ。


 やがて、参列者が散り散りに帰りだす。


「アナ、帰りましょう」

 ママがそう声をかけてきた。


「嫌だ! ダニエルおじさんが帰ってくるまで、ここ動かない」

 あたしは怒鳴った。


「アナの気の済むようにさせてやろう」


 おじいちゃんにそう言われ、赤い目をしたママは、

「お昼ご飯には帰るのよ」と言い、二人は帰っていった。

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