第4話 お葬式
その日の夜、おじいちゃんはおばあちゃんの棺のそばにいた。
ママは一晩中電話の前にいた。でもかかってくるのは、親戚や知人のお悔やみと、葬儀社からの明日の段取りの電話だけだった。
おじさんから電話はなかった。
あたしは玄関ポーチでダニエルおじさんを待ち続けた。
もう六月だけど、夜はやっぱり寒かった。ママは黙って毛布を渡してくれた。
月は出てなくて、星がきれいだった。
「お願いお星様、おじさんを連れてきて。あたしにおばあちゃんとの約束を守らせて」
でも、星は瞬きながら西に沈み、やがて東から朝日が昇ってきた。
ダニエルおじさんは帰ってこなかった。
喪服に着替えた、今日はおばあちゃんのお葬式だから。
棺が霊柩車に乗せられて、墓地まで運ばれていく。
あたしは何度も何度も振り返る。ダニエルおじさん、まだ? まだなの?
教会につくと、おばあちゃんの棺を四人の男の人たちが担いで、静かに西の墓地へ進んでいく。西の墓地は一番新しいお墓の場所だった。
おばあちゃんのお墓の穴の隣に、三つの墓石が並んでいた。
ダイアナ・ロー、十七歳。高校生のお姉さんで、先週自殺した。アイザック・フレッチャー、六十五歳。ジェシカおばさんの旦那様、先月なくなった。右端がトニー・グレゴリウス九十歳。去年老衰で死亡。
墓穴は棺のサイズに掘られて、土は傍に手際よく積み上げられている。
「塵はもとあった塵に。霊はこれをくださった神に帰る」
おばあちゃんの好きだった讃美歌百五十七番の流れる中、この教会の若牧師様のお祈りの声が響く。
「お願いおじさん、早く来て!」
あたしは必死に祈り続けた。なのに、おばあちゃんの棺には二本のロープが固定され、もう穴に降ろされようとしている。
「そろそろ棺を下ろす時間です。皆さんお墓の周りに集まって。皆さんこの最後の機会に、しばし故人に思いを馳せましょう」
若牧師さまの声が響く。口を開けて待ち受ける墓穴の上に、棺がロープで釣り上げられる。
ダニエルおじさんがまだ来てないのに!
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