第7話 話してごらん
なのにおじいちゃん牧師様は、若牧師様の横に立っている。
おじいちゃん牧師様は、口をパクパクさせて若牧師様の方を指差した。
「話してごらん」て言ってるみたい。
「あのね若牧師様、あたしのおばあちゃんね……」
話し出すと止まらなくなった。家出したダニエルおじさんの事、二十四年ものおばあちゃんのお祈りの事、おばあちゃんとした約束の事を必死に話した。
若牧師様は黙って聞いてくれた。
「ねェ若牧師様、どうしておばあちゃんの祈りは神様に届かなかったの?」
若牧師様はしばらく考えた後で言った。
「確かに神様は、正しくないお願いを退けることもある。僕がそうだったからね。
でも、よく考えてごらん。
アガサさんのお願いは
『ダニエルおじさんともう一度会えますように』
じゃなくて、
『おじさんが帰ってきておじいちゃんと仲直りをしてくれますように』
だったはずだ。
それはアガサさんが亡くなっていたとしても、叶えてあげられる願いだよ」
「あ!」
初めて気がついた。おばあちゃんは、祈りの中で
『ダニエルおじさんと、もう一度会いたい』
とは一度も言わなかったんだ。
「だって、初めおじさんはパパに『連絡をする』とは言ったけど、帰ってくるとは言わなかったよね。
でも『おばあちゃんが倒れた』と聞いたら、実の息子なら心配であわてて帰ってくるはずだ。
帰ってくるはずのなかった人が、帰ってくる気になった。
それこそ“奇跡”じゃないか。
でも、何しろおじさんのいる遺跡は携帯の電波も届かないほどの奥地だろう?
伝言をもらって急いで出発して、遺跡から一番近くの空港に向かったとしても、モンゴルじゃ飛行機の便もそう多くない。
乗り継ぎがうまくいったにしても、まだおじさんはこちらに向かっている途中なんだと思う。
だから、おばあちゃんの祈りは神様に届いて、ちゃんと正しく動き出しているんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます