刃が交わされるわけではありませんが、つばぜり合いにも似た言葉の応酬から書くことに対する執着と作家でいるには書き続けなければならない、という焦燥を感じます。水月と依子の二人を繋ぐのは小説であり、創作活動そのものであり、またそこに秘められた互いへの憧憬と嫉妬なのでしょう。挿入される詩の完成度も高いです。要所要所核心に触れる言葉を本文で語らず、あえて詩で示すことによって彼女らがつかみどころのないなにかを捉えようとしていると感じました。