第2話 守屋 佳音 18歳

わたしは守屋佳音。18歳。

都の大学病院に入院していて、2日後、病気の手術を受ける。

病院の図書館に行って読書を始める。

「はあ…気が重い」

図書館に人が少ない時間帯だからか、どうしても本音が出てしまう。

お母さんやお父さんには「大丈夫だよ」って言えたのに。

本当の自分って弱いんだな、と感じた。

座っている椅子の隣に、いつの間にか女の子が座っていた。

小学6年か、中学1、2年くらいだろうか。

身長は小学5年生くらいなのに、中学生くらいとも思えるのは。

美しいのだ。思わず小さくため息をつく。

アメジストのような綺麗な瞳。

漆黒の髪は腰まで伸びている。

謎のキャラクターが描かれたTシャツとデニムが輝いて見える。

「お姉さんさ、明後日手術?」

「う、うん。そうだけど…?」

声も綺麗だ。というより、何故そんなことが分かったのだろう。

「なんで分かったのかは秘密。」

その瞬間感じた。この子は人ではない。

いや、人と言えば人なのだが。…高度な生命体って感じ?

「あ、「1リットルの涙」。その本わたしも読んだことありますよ。」

「う、うん。亜也ちゃん、とても素敵な人だよね。」

「ですよね。手術、怖いかも知れないけれど、亜也ちゃんみたいに

若いころに亡くなってしまった人の分生きてやるんだ、と思うと頑張れますよ。」

亜也ちゃんみたいに亡くなる人は世界にもたくさんいる。

その子たちの分も生きてやる…。

「確かに、死なずに頑張ってやる、絶対治ってやるって思える。」

「でしょ?じゃあ、手術頑張ってくださいね。それでは!」

「バイバ…え?」

女の子は消えていた。

やっぱり、あの子は人間じゃない。

でも、なんだか元気を貰えた。

2日後、手術の後。

「…」

麻酔から目が覚めた。

お母さんとお父さんがいる。

「佳音!良かった…。」

「佳音…。頑張ったな。」

お母さん、お父さん、あの女の子、ありがとう。

亜也ちゃんを始めとした若いころに亡くなった皆さん。

わたし、皆さんの代わりに頑張ります!


さらに10年後。佳音、28歳。

わたしは今お母さんたちの近くのマンションに住んでいる。

いや、もう「わたし」だけじゃない。

大学で彼氏が出来て、その人と結婚し、女の子を1年前に授かった。

だからもう守屋じゃなくて晴山。

そして赤ちゃんの名前は夫の名前の晴翔の晴と佳音の佳を取って

晴佳はるか」と名付けた。

そして今家族がいるということは…そう。

手術の後はものすごいスピードで病気が治り、退院。

その後無事大学に入学できたのだ。

今はイラストレーターとして活躍している。

あの時の女の子が度々モデルになったりする。

ねえ、あの時の女の子。

あなたのおかげで今こんなに幸せな生活が出来てるよ。

ありがとう!

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