異文化

るつぺる

シルバリオスとベラドニカ

「ねえ、これってパン?」

「いや、コーギーの尻さ。君はそんなこともわからないのかいお茶目さんだな」

「プルプル、ぷるんぷるん」

「さ、もう行くよ」

「たゆんたゆんのバインバイーン」

「行くよ」

「ねえシルバリオス、これはお持ち帰りできますか?」

「できないよ。この世界のものをお持ち帰りすることはできない。来る前に言ったはずだよこのすっとこどっこい」

「この世界は奇跡で溢れかえっている。でも私たちドンルルンチョパミテ族はそれを眺めたりすることしかできないしょーもない種族」

「しょーもない言うな」

「ねえ、シルバリオス。このままどこか知らない世界見つけてみないか?」

「ルールなんだよ。ダメなんだ。我々ドンルルンチョパミテ族は常にどの世界においても傍観者たるゆえドンルルンチョパミテ族であれる。それによって争いもなく平和な秩序が維持され悲しみの中で死ぬこともない。ドンルルンチョパミテ族なら子供でも知っていることだよハナクソ」

「コーギーの尻」

「さ、行くよベラドニカ。君のわがままでここに長居はできないんだ」

「最後にお願い。わたしはうな重というものを食べてみたい」

「話を   きけ」

「うな重が食べれるならわたしはコーギーを諦める。そしてドンルルンチョパミテも」

「正気かベラドニカ。僕がこれだけ言ってもどうして分かってくれない? ここは僕らが住むべき世界ではないんだよ。うな重なんて食べたら君は。君は。クソッなんだってんだそんな顔するなよ。僕は君が好きなんだ」

「うな重」

「いけよ。僕はひとりで帰るさ。ありがとうベラドニカ。僕だけが正気なんだ。さあお行き。君はもう自由だうな重でもコーギーでも好きなだけ手にするがいいさ」

「ありがとうシルバリオスじゃあね。しあわせでいてね。バイバイね。大好きアル。グッバイアル」

「ほんとに行くな! ほんとに  行くなよ」


 それが百年前の今日のこと。私もベラドニカも若くお互いの気持ちなどわかっていなかった。彼女は外の世界に憧れて私は今の暮らしを愛した。そんな二人が結ばれるはずもなく、私はベラドニカではない女性と結婚し二人のお子を授かった。ベラドニカは今頃どうしているだろうか。うな重は食べられたかい。もはや知る由もない。ドンルルンチョパミテの日の出はいつみても綺麗だ。これを手放してでもベラドニカは外界のうな重をとった。私はいまだにうな重な味を知らない。なあベラドニカ。うな重ってどんな味なんだい。もはや知る由もない。子供たちはドンルルンチョパミテの学校でドンルルンチョパミテの教育を受け、いまや二人ともドンルルンチョパミテのミソカリヤパノイテスの一員さ。二人ともミソカリヤパノイテスのブヤブヤートチアナカンデリヴルだ。君にはこの凄さはわからんだろうね。何せ君はうな重を選んだのだから。うな重。ベラドニカ。うな重ってのはあれかい。濃いかい? もはや知る由もない。妻のおかげだよ。なんのことかって? もちろん子供たちのことだよ。ミソカリヤパノイテスのブヤブヤートチアナカンデリヴルなんて誰もがなれるわけじゃない。二人の懸命さ、それに加えて妻の支えは不可欠だった。彼女は素敵な人だよ。なあベラドニカ。うな重はまだ余っているかい。余り気味かい。もはや知る由もない。妻と二人の子供は私の誇りだ。うな重はどうだ。誇りかい。そんなはずないとは思うがもはや知る由もない。うな重、ベラドニカ、うな重、ドンルルンチョパミテ、ミソカリヤパノイテス、ブヤブヤートチアナカンデリヴル、うな重、ドンルルうな重、ベラドニカ、うな重、ミソうな重、パン、コーギーのパン、尻重、尻重、コーギー重、うなコーギー、ウナコーワクール、ドンルルンチョパミテ、ウナドンルル、うな丼、うな丼とうな重、ウナドントウナジュー、ウジュライクうな重、オーベラドニカ、ベラドニカの尻、うなの尻、尻ドニカ、尻ドンルルンチョパミテ、ミテ尻、尻見て、尻を見て、ほら見て尻のほら穴、ほら穴を見てベラドニカ、ほら僕のほら穴を見てベラドニカ、ねえ今すぐ見てほら穴僕の尻、ほらほら穴ほらほりほららいでほららぐときほらにけり尻穿つコーギーのうなけつ




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