第12話 時々、眩しすぎる欠片を、拾うべきではなかったと、思ってしまうんだ。

「では、すぐに」


 暗緑色あんりょくしょくの癖毛で、黒のアンダーリム眼鏡をかけたアイファ・シューラーは、幼馴染みである柔らかな茶色の短髪をしているジェン・オネットを見ると、二人同時に頷き、走っていった。


「若いっていいわねー」


 そんな二人を、ピンク髪のボブカットで低身長なジョリー・クロウは眩しそうに遠い目で見つめていた。


「若いって、いいな……。きっと、アソコの回復も早かろう……」


 濃いベージュ髪で筋肉質な男は、のたうち回るのは止まったが、まだ股間を押さえていた。



 約二分後。


「これだけあれば、足りますよね」


 アイファの宣言通り、二人は魔法植物を手にして、三分以内に戻ってきた。


「ん! オッケー! さっすが後輩くん! 本当にどっかのデカ迷子とは違うわー! 私、結婚する相手を間違えたかしら?」


 ジョリーはケラケラと笑った。


「そりゃないぞー、ジョリー」


 ディックは股間を押さえつつ、よろよろと立ち上がった。


「いえ、俺は遠慮しておきます。あなたはタイプですが、タイプではないので」


 ジョリーの告白とも取れる言葉を、アイファは淡々と断った。


「タイプだけど、タイプじゃない? どういうこと?」


 ジョリーが首を傾げると、アイファの隣にいたジェンがふふっと笑った。


「小さくて明るい女性が好きなんです、こいつは」


「おい、ジェン」


「小さくて明るい? 私のことよね?」


「ええ、そこまでは。さらにこいつは、人懐っこい小動物のような女性が好きなんです」


「ジェン……」


 好きな女性のタイプをバラされたアイファは、ジェンを睨んだ。


「小さくて明るい、人懐っこい小動物な女性……」


 ジョリーは呪文のように言うと、くすくすと笑い、アイファの両肩を掴んだ。


「アイファくん」


「何ですか」


「そんな女性、いないよ」


「知っています」


「だからさ、私が産んであげる!」


「はぁ!?」


 ジョリーの思わぬ言葉に、アイファは素っ頓狂な声を出した。


「小柄で明るい私の子、きっと女の子なら人懐っこくて可愛いよー」


「…………」


 アイファは、リアルに想像した。


「小動物みたいだよー?」


「…………」


 アイファは、さらに真顔まがおで想像した。そして、思った。


「たまらな——」


 「たまらないですね」と。だが、彼の言葉は、


「だがその代わり! 俺みたいにムキムキかもしれんがな! わっはっは!」


 ディックの空気を読まない発言で遮られ、さらに想像し、


「……やっぱり結構です」


 げんなりしたのだった。

 


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