第10話 そして、君の欠片は、どれも賑やかで煌めいていて。

 麓の村人たちは、皮膚を白くさせていた。

 動こうとし顔を歪める者、目の前で家族が亡くなり、手を伸ばそうとして止まり涙を流す者。

 これらの様子から、この病は、皮膚を硬直させているということが、史上最年少で医師免許を取得したアイファ・シューラーと、彼の猛勉強に付き合ったジェン・オネットにもわかった。


「何が、起こっているんですか……」


 愕然がくぜんとする二人に対し、


「わからん。だが、わかるのは」


 彼らを先導してきた濃いベージュ髪の筋肉質な男、ディック・クロウは、


「村人たちを数人でもいいから助ける。きっと俺は、そのためにこの村に来る運命だった。それだけだ」


 少年のような笑顔を二人に向けた。


「え、この病気、知っているんですか?」


 アイファの問いに、


「知らん!」


 ディックは自信満々に答えた。


「ダメじゃねぇかよ……」


 アイファが呟くと、


「ん?」


 村の中から白衣を着た小柄な女がやってくるのを見て、ジェンは声を出した。

 その女は、低身長でピンクのボブカットを揺らしながら、早足で三人に向かってきていた。……何故か、彼らを睨んで。


 そして、女の顔が見え、ディックは顔を輝かせた。


「さっそくいいところに! 彼女が俺のつ——」


 ディックの言葉は、


「遅ーい!」


 女の怒気が込められた高い声で遮られた。


「——」


 突然の大声に、アイファとジェンは眉をひそめた。


「いや、だがっ! 見てくれ! ジョリー! 人手だ! それもあの有名な! “神を超える手を持つ”と言われている! あのアイファ・シューラーだぞ!?」


 ジョリーと呼ばれた女は、アイファを一瞥いちべつすると、何事もなかったかのように、ディックに向き直った。そして、小さな体のどこからやってくるかわからない力で、ディックの耳を引っ張り、


「なーにが! あのアイファ・シューラーだぞ!? だ! 時間との勝負だって言ったでしょー! 魔法植物を採ってくるのに! 何分かかってるのよー!」


 口を近づけると、叫んだ。


「うおぉおー! 耳がぁー! 耳がぁー!」


 ディックは鼓膜が痺れるのを感じ、顔を歪めた。



 これが、ミッチェル・クロウの母親、ジョーリー・クロウとの、出逢いだった。

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