第18話 * 紫紺の洞窟 5*
「あずみちゃん! 左のゾンビをお願い!」
「は、はい!」
アリスはあずみにゾンビの対処を任せることにした。
日本刀なら、ゾンビの方が相性がいいだろう。
アリスは正面のスケルトンに向かっていく。
メイスを大ぶりに振って、二体同時に相手をする。
『アリスちゃんかっこいい』
『二体撃破!!』
「数が多いからね! さくさく倒していくよ。って、囲まれちゃったじゃん」
アリスがスケルトンを相手にしている間に、周囲を囲まれてしまった。
「こ、これはやばい!」
『これはくるぞ、くるぞ』
アリスはメイスを振り回して、スケルトンの包囲を崩そうとする。
しかし、力の入っていないメイスのぶん回しではスケルトンの姿勢を崩すことはできなかった。
ジリジリと包囲を狭められて、スケルトンのボロボロの剣がアリスに一斉に殺到する。
正面からの剣をメイスで受け流したアリスだったが、背後からの攻撃はまともに入ってしまった。
首を狙ってきた一本が吸い込まれるようにして、首を落とした。
『ぽろり、ぽろり!!』
『ぽろりキタ!!!!!』
『期待通りです! アリスちゃん!』
【†闇の死者†さんが800ルクス課金しました】
【あんこ02さんが600ルクス課金しました】
【マサキさんが400ルクス課金しました】
【バタバタさんが500ルクス課金しました】
「みんな! あーりーがーとー!!」
マーチから発せられるコメントと投げ銭を聞き取りつつ、アリスの首は跳ね飛ばされていった。
あずみの足元に。
「ああああ!! 先輩の生首ぃぃぃぃ!」
「あずみちゃん! ゾンビに集中して! こっち来ないで!!」
『wwwwwww』
『こ れ は !』
『いいぞ! やってしまえ!』
あずみは「首を拾おうと思ったんです」とあとで弁解した。
パニックになったあずみは慌ててアリスの首に駆け寄ると勢い余ってそのまま蹴飛ばしてしまったのだった。
『サッカーボールwwww』
「あああああ!!」
アリスの悲鳴が洞窟の中にこだました。
あずみが「ごめんなさい、ごめんなさい!」とゾンビを倒しながら謝罪を口走っている。
「まずは! 首を! 取り戻します!」
と宣言してアリスは首に走り寄る。
首はなにかの台座のようなものにあたって止まった。
首を拾い上げて、傷口の上に戻した。あー、痛かった。
「ふ〜ぅ、首を拾えました〜」
『おつ!』
『次のぽろりを期待!』
「ここになにか、台座がありますね! なんでしょうか」
アリスは向かってくるスケルトンを薙ぎ払いつつ、台座に向き直る。
「五角形の台座に、紫のクリスタルが嵌め込まれてますね。ちょっと、触ってみましょう」
実況しながら、アリスはクリスタルに触れた。
クリスタルはホワンと紫色に光り輝く。
「お、輝きましたね、なにかのギミックかな? 紫紺の洞窟にギミックとは珍しい〜」
『後ろ、後ろ!』
『アリスちゃん、気をつけて!』
「うざったいな! もう」
腰を捻りながら、スケルトンを薙ぎ払うアリス。
「アリス先輩! ゾンビ倒し終わりました〜」
あらかた薙ぎ倒したあずみが、手を振りながらアリスに近寄ってくる。褒めて褒めてと尻尾を振りながら近寄ってくる犬みたいだった。
「うん。うん。えらいね。あずみちゃん」
「えへへ」
「さてさて、台座ですが……。おっと」
アリスとあずみが見ている前で、クリスタルの輝きが弱く点滅しやがて消えてしまった。
「どういうことでしょう……」
「うーん」
「こういう時は、周りを調べてみないとね」
アリスはメイスを担いで、広場を回ってみることにした。
「え〜と、どうやら、広場にはこれと同じ台座が五つあるようですね。やっぱりクリスタルがハマっていて触ると光ります」
一つ一つの台座を触って実演してみせるアリス。
中央の台座に戻ってきた。
「これは、やっぱり、クリスタルが光っている間に全部のクリスタルを光らせるとギミックが解けるんでしょうね。きっと」
『ダッシュダッシュ!』
「台座も見てみましたが、ダンジョン文字は確認できませんでした。ということは、これは順番は関係なさそうですね。とりあえず、光らせれば大丈夫そうですって、言ってる側からゾンビがまた広場に侵入してきましたね〜」
マーチのカメラを入り口にふって見せる。ゆらゆらと動くゾンビが数体、広場に侵入しようとしていた。
「それじゃ、役割分担しまーす」
アリスが挙手をした。
「僕がスピードポーションを飲んで、台座を光らせます! あずみちゃんはゾンビを駆除してください!」
「はい。了解しました。それで、スピードポーションってなんですか?」
「名前のとおり、早く動けるようになるポーションだよ。今回はこれを使って台座の間を走り抜けたいと思います」
アリスは、マーチの中からスピードポーションを取り出した。
ガラス瓶の中は赤い液体で満たされている。
「これ、まずいんですよね〜」
赤い色の液体を飲み干す。
「それじゃ、よーいドン!」
掛け声と共にアリスは走り出した。
あずみもまた、ゾンビに向かっていく。
一台目の台座にタッチをしてクリスタルを光らせる。
二台目、三台目も順調だ。
「アリス先輩! 二匹、そっちにいきました!」
あずみが叫ぶ。
*** ***
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