第17話 * 紫紺の洞窟 4*

 アリスの体感的に今日は同接の数が多いように感じる。昨日のあずみの乱入効果だろうか。


「はーい。今日は、新人ちゃんとコラボ配信第二弾だよ! 昼間の臨時配信を見てくれた人には二回目だけど、自己紹介してもらいまーす」


 アリスはあずみをマーチの視界の中にひっぱり込んでくる。


「はい! 自己紹介お願いします!」


「は、はい。あずみといいます。その、頑張りますのでよろしくお願いします!」


『新人ちゃんキター』


『アバター変わってる!』


『昼間の配信、見たよー』


『アバターかわいいね』


「かわいいアバターでしょ。昼間の配信で、みんなの意見をもらいつつ決めました〜。アーカイブ残っているのでよければ見てね!」


 ちゃっかりと過去の配信の宣伝をするアリスだった。


「さて、今日は紫紺の洞窟の新エリア徘徊をして行きたいと思います〜。昨日は不幸な事故で全然、徘徊できませんでした! ね、あずみちゃん」


「すみませんでした」


 律儀に頭を下げるあずみ。


『真面目ちゃんだ』


『どんまい』


『楽しかったから、問題なし!』


『今日の配信に期待』


「まずは扉を開けて行きたいと思います。この扉にギミックはないみたいですね。触れば開きます」


 アリスの胸の下あたりの位置に紫色のクリスタルにそっと触れる。


 軋む音を立てて、扉が開いていく。


「スケルトン、出るなよ! 出るなよ!」


『フラグwwwww』


『昨日と同じですねwwwww』


 扉が開き切った先にいたのは、やっぱりスケルトンだった。


 五体ほどのスケルトンが扉の前に湧いていたようだった。


「出たぁぁぁぁ! マーチちゃんメイスちょうだい!」


 アリスはマーチからメイスを取り出して、スケルトンの頭部に向けて振りかぶった。


 勢いのついたメイスはスケルトンの頭部に命中。頭蓋骨を破壊した。


「あずみちゃん、教えた通りに頭部を狙って!!」


「はい!」


 あずみも日本刀を取り出すとスケルトンを切りつける。


 骨しかないスケルトン相手に、切る系の武器は相性が悪い。


 日本刀に慣れていないあずみは頭部を狙って、武器を振るうが思うようにダメージを与えられていないようだった。


『日本刀JKキターーー!』


【まさひーさんが700ルクス課金しました】


「ま、まさひーさんありが!」 


 あずみのマスコット、ハロウィンが投げ銭とコメントを読み上げる。あずみがコメントに返信する。


「まさひーさん、夜もきてくれたんだ! ありがとう!」


 戦うのに必死でコメントに反応できていないあずみに変わって、アリスがフォローを入れていた。





「これが、最後! イェイ!」


 アリスが最後のスケルトンを破壊する。アリスは、破壊と同時にイェイ! とポーズをつけてマーチの向こうで見ているはずの視聴者にアピールしていた。


 あずみは肩でハァハァと息をして、今にも膝をつきそうだった。


「それじゃ、奥に進んで行きたいと思いまーす!」


 あずみに「行くよ」と促して立たせる。


「ちょっと休みたいです……」


「配信始まったばかりだからね! 先は長いので立った立った!」


「はい……」


『アリスちゃん厳しー』


『アリスちゃんが先生している〜』


【ゆんゆんさんが500ルクス課金しました】


【言の葉さんが500ルクス課金しました】


「みんな、ありがとう〜。これも愛ゆえだよ」


『あずみちゃんも頑張って』


『はよ、先に進めや』


「ここ、新エリアは人の手が加わっている場所みたいですね〜。床は石畳だし。壁も天井もツルツルと綺麗です」


 アリスは壁に近寄って、触ってみせる。どんな道具を使ったのだろうか。壁は鑿のあともなくツルッとしていた。


 通路も真っ直ぐに作られている。この手前にあった天然洞窟エリアとは大違いだった。


「これは、天井も高いし水も溜まっていないし歩きやすくていいですね〜」


「天然洞窟エリアは、狭くて大変でしたものね」


「そうそう、あずみちゃんなんか狭い通路にはまちゃって引っ張り出すの大変だったんだよ〜」


「言わないでください! 先輩!」


 アリスの暴露にあずみが顔を赤くして抗議した。


『あそこかwww』


『みんな一度は引っかかる天然トラップ』


『見てみたかった〜』


「あんなに美味しい絵が撮れると思ってなかったら、マーチで撮ってなかったんだよ。僕の判断ミスだね。反省している」


「撮らなくていいです! 撮らないで!」


「はははは。トラブルを配信するのが一番楽しいんだよ! あずみちゃん。覚えておいて」


『先生の指導入りました〜』


 雑談をしながらアリスとあずみは新エリアを奥へ奥へと進んでいく。


「今日はスケルトンの涌きが少ないですね。どこかに溜まっているのかな」


『今日のぽろり会場はどこかな』


『今日のぽろりに期待したい』


「そう簡単には落とさないよ! 痛いもん」




『飽きてきたな〜』


『今日は離脱します』


 単調な道が続く。


 アリスは少し焦っていた。このままだと、配信が持たない。雑談のネタも尽きてきた。そろそろ、スケルトンでもゾンビでもいい。出てきて欲しい。


「あー、もう。スケルトンでもゾンビでもいいよ! 出てきて」


 アリスがヤケクソで叫んだ。


『フラグ建築士ですね。わかります』


『wwwww』


 そんなアリスの祈りが通じたのだろうか、通路が終わり広場に出た。


 広場には、ゾンビにスケルトン。天井には大蝙蝠がぶら下がっているのが確認できた。


「お、広場ですね! モンスターをやっつけつつここを調べようと思います」




***   ***



読んでくださり、ありがとうございます!


面白かった! 楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しく思います

ランキングに反映され、更新へのモチベーションになります

よろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る