第2話…「ヒマ」がいない
央介は、猫餌と水をトートバックの中に忍ばせて、公営賃貸マンションの中庭に入った。
今年の夏は暑い。毎年、夏はどんどん暑くなる。温暖化の影響だろう。台風級の雨風も多く、西日本では災害になることも。
暑いからか、中庭に「ヒマ」の姿がない。ここ数日、「ヒマ」の姿を見かけない。ヒマ以外の猫の姿もない。三毛もタキシード柄もみんないない。みんなどこで暑さをしのいでいるのだろう。
央介は、いつもの場所に猫餌と水を置いた。いつも場所とは、階段の下に三角の空間がある場所のことだ。雨が降っても、そこは濡れない。水は豆腐の空の容器に入れて置く。猫餌は乾燥餌を数匹分が足りる程度は置いておく。
この公営賃貸マンションの住人も管理人も、地域猫に理解がある。猫餌や水が置いてあっても、それは当然のこと。むしろ、彼らは入れ替わり立ち代わり、猫たちの様子を見に来ては、猫餌や水が足りているか気にしている。
公営賃貸マンションの一階の飲食店の経営者たちや従業員たちも同じだ。料理の最中に出た余り物を猫餌用に調理して提供している。寿司屋の上物のマグロの切れ端は、そのままボイルして猫餌用となる。なんと贅沢なのだろう。
「それしても、ヒマはどこにいったのだろう。」
央介は、心配しながら、公営賃貸マンションの中庭を出た。
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