セカンドチャンス
@oookagawa_sakura
第1話…地域猫
「ヒマのところに行かないと。」
仕事から帰宅するなり、猫餌と水を準備しながら、
「お腹すかせてるかもしれないから、早く行った方がいいね。」
在宅勤務をしていた理香も同意した。
「ヒマ」とは、近所の公営賃貸マンションを
なぜ、野良猫になったのかは分からない。気づいたら、そこにいた。近隣の住民や飲食店の店主など複数の人々が「ヒマ」を気にかけている。猫餌や水を提供している。
この公営賃貸マンション、相当に古い。定期的に修繕工事はされているが、昭和の趣が残る。中庭のあるコの字型の建物。中庭にはかつては遊具や砂場があり、子供たちの遊び場として使われていであろう広場が残る。今は、遊具や砂場もなく、雑草が生えている。ここが「ヒマ」の
野毛や伊勢佐木町に隣接する繁華街だけあって、公営賃貸マンションの一階は飲食店が占めている。バー、スナック、寿司屋、串揚げ屋、焼き鳥屋…。まるで遊園地のように多様なラインナップ。
午前中は一部を除き、飲食店のシャッターは閉まっている。シャッターが開くのは午後から。午後から開店準備が始まる。そして、夕方から営業開始。飲食店の営業開始とともに街は昼とは違う賑やかな顔になる。色で例えると、昼はモノトーン、夜はカラフル。
「ヒマ」を始め、この辺りの野良猫は実は野良猫とは呼ばれていない。地域猫と呼ばれている。行政や愛護団体、NPO、協力動物病院などが不妊手術や去勢手術を行い、近隣の住民や飲食店の店主などが見守っている猫たちだ。
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