第15話ハヤトがオニ

我々は加持さんの知り合いに、川崎拓哉の所在について聞いてみたが、だれも所在を知らず会ったことすらもないという。

さらに我々は川崎拓哉の職場を突き止め電話してみたところ、川崎拓哉はすでに退職しているということだった。

川崎拓哉の調査はここで行き詰まり、我々は川崎拓哉がひとりかくれんぼで呼び出した、子どもの霊についての調査に方針を切り替えた。

「映像を見る限り、子どもは5歳くらいだね。例の団地付近で、5歳の男の子が亡くなった事故がなかったか調査してみよう」

その調査はアシスタント道草とフリーレポーター朝美に任せ、ディレクター椿はカメラマン三吉を連れて再び例の団地へとやってきた。

402号室へ入ろうとすると、ドアの奥から音が響いているのが聞こえた。

「これはテレビの砂嵐だ···!」

霊の存在を確信した椿は、管理人室へ向かい稲辺さんから再び402号室のカギを受け取り、稲辺·三吉と共に部屋の中へ潜入した。

ところが部屋の中へ入ると、以前あったテレビはなくなっていた。それどころかキッチンの電子レンジや、居間のテーブルもなくなっている。

「稲辺さん、テレビは処分しましたか?」

「あぁ、電化製品や家具は三日前に処分したはずだ。なのにこれは···!?」

テレビを処分したはずなのに聞こえる砂嵐の音、さらに何者かの足音が聞こえてきた。

「だれか来る···!」

三人が恐る恐る後ろを振り返ると····。

「出たーーーっ!!」

そこには投稿映像と監視カメラの映像に映っていた、あの痛々しくおぞましい子どもの霊だった。右手に人形、左手にはナイフを持っている。

その霊は椿の方を見て言った。

「つぎはハヤトがオニだよ···!」

霊はこの言葉をこちらに向かって連呼する、椿は震えながらも撮影を続けた。

すると子供の霊は、ナイフを振り上げてこちらに向かってきた。

「よせ、やめろ!やめてくれ!!」

ニタニタ笑う不気味な姿に、三人は震えて部屋の端へ下がることしかできない。

そしてキャハハと叫びながら向かってきた···と思いきや、その姿はいなくなっていた……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る